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脳内化学物質を高感度かつ選択的に検出できるファイバセンサの開発

【本学研究者情報】

学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
准教授 郭媛元
研究室ウェブサイト

〇大学院医学系研究科 
教授 虫明元
研究室ウェブサイト

〇学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
助教 阿部博弥
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 多機能ファイバとDNA分子プローブを複合させることで、脳内で特定の神経伝達物質を高感度かつ選択的に検出できる神経デバイスを初めて開発しました。
  • 多機能ファイバ技術を活用することにより、脳内の電気・化学信号を同時に計測・操作できるようにしました。
  • 多機能神経デバイス技術の革新により、脳機能の理解および脳病態のメカニズムの解明に貢献すると期待されます。

【概要】

脳内では1000億個以上の細胞が複雑な回路を形成しており、細胞間で電気・化学信号が伝達されています。神経細胞からの電気信号を記録する技術は成熟していますが、脳内の細胞間コミュニケーションを担っているのは繊細な化学信号であり、その活動を正確に測定するツールは限られています。非常に多くの化学物質が存在する脳内で特定の化学物質の動態と脳機能・病態の関連を調べるためには、選択的に化学物質を定量化する計測技術が必要とされます。

 東北大学学際科学フロンティア研究所の郭媛元准教授、工学部学部生の雜﨑智沖氏、久保稀央氏らの研究チームは、熱延伸技術注1で作製された多機能ファイバ注2と、アプタマー注3と呼ばれるDNA分子プローブを組み合わせることで、多機能神経デバイスの未踏領域である生体内電気化学センシング機能を実現しました(図1)。そして、やる気や幸福感と関連する神経伝達物質であるドーパミンなどの特定の化学物質を、脳内の複雑な環境において高感度かつ選択的に検出することに世界で初めて成功しました。さらに、多機能ファイバ技術を活用することで、脳内の電気信号と化学信号の同時計測と操作を可能にしました。

 本研究成果は、分析化学分野における国際的な学術誌である米化学会Analytical Chemistry誌に2023年4月24日付で掲載されました。

図1. 脳内化学物質を検出できる、DNAアプタマーを用いたファイバセンサのイメージ図。

【用語解説】

注1 熱延伸技術
加熱しながら引き伸ばす技術。利用できるのは単一の材料に限定されず、金属・複合材料・ポリマーなど多種類を組み合わせることが可能である。「金太郎飴」を作る方法と似ており、最初に、必要な多種類の材料を組み合わせた大きいプリフォームという成形物を作り、これを加熱しながら引き伸ばすことによって、電気・化学・光などの機能をマイクロからナノレベルで集積した、長さ数千メートルのファイバを作製することができる。

注2 多機能ファイバ
直径100〜500 µm程度のポリマー製繊維の中に、導電線・光路・流路・電気化学信号・機械駆動用ワイヤなど、さまざまな要素を操作したり測定したりするのに必要な構造を集積したファイバ。

注3 アプタマー
特定の標的分子と結合することができる一本鎖DNA核酸分子。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
新領域創成研究部 准教授
郭 媛元 (Yuanyuan Guo)
電話: 022-795-5768
E-mail:yyuanguo*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
※20236月までご連絡はメールでお願いいたします。

(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部 特任准教授
藤原 英明 (ふじわら ひであき)
電話: 022-795-5259
E-mail:hideaki*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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