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東日本大震災後の南三陸町では在宅避難者の医療アクセスに遅れ

【本学研究者情報】

災害科学国際研究所
教授 江川新一

研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 東日本大震災後、宮城県南三陸町の全医療機関は被災により機能を停止し、診療は避難所または在宅で行われることとなりました。当時の状況を調べたところ、在宅避難者が最初に医療支援を受けた日は、避難所避難者よりも平均で約1週間遅かったことがわかりました。
  • 在宅避難には感染症や睡眠障害のリスクを下げるメリットがある一方、ライフラインや情報の途絶により必要な治療が遅れる可能性もあります。
  • 今後の災害発生時、在宅避難者への医療支援が遅れないために、地域社会と保健医療が協力し、災害医療体制を整備していく必要があると考えられます。

【概要】

2011年3月の東日本大震災により、宮城県南三陸町では全病院が機能を停止し、診療は避難所または在宅で行われることとなりました。

 東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)の研究グループは、在宅避難者(460人)の発災後の初診日は、避難所避難者(2,378人)に比べ、平均で5.2日遅かったこと、さらに、年齢・性別・診断名・地区などの背景条件をそろえた459人ずつの傾向スコアマッチング手法注1においても、初診日が在宅避難では平均で6.4日遅かったことを明らかにしました。

 高齢化社会で起きる災害では、さまざまな医療ニーズをかかえる方が在宅避難をする可能性があります。東日本大震災における災害関連死の約半数は自宅で発生したものでした。厳しい環境に置かれた在宅避難者の慢性疾患の治療を早期に開始・再開できれば、災害死亡を減らすことができると考えられます。

 今後、在宅避難における医療へのアクセス遅延を少しでも減らすため、地域社会と保健医療が協力し、個人健康情報の活用、避難所・在宅避難者の情報把握、余裕をもった治療薬の常備等を通じ、災害医療体制の整備に取り組むことが重要です。

 本研究成果は、2023年5月15日に災害医学の専門誌Prehospital and Disaster Medicineに掲載されました。

図1. 南三陸町における避難形態による初診日の差(太線:在宅避難、細線:避難所避難)(傾向スコアマッチング(注1)により背景をそろえた場合)

【用語解説】

注1 傾向スコアマッチング手法:
似通った特性をもつ対象者を選択することによって、介入や暴露の効果を推定する統計的マッチングの手法。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 災害科学国際研究所
教授 江川新一
TEL:022-752-2058
E-mail: egawas2*irides.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 災害科学国際研究所
広報室
TEL: 022-752-2049
E-mail: koho-officie*irides.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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