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カルシウム蓄電池の長期繰り返し充放電に成功 "資源性に優れる元素のみ" から作られる次世代蓄電池開発が前進

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 助教 木須一彰
材料科学高等研究所・金属材料研究所 所長・教授 折茂慎一
材料科学高等研究所 主任研究員 Rana Mohtadi
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 天然鉱物コベライト(注1)を30 nm程度まで小さくすることで、高速にカルシウムイオンを貯蔵することができる正極材料を開発しました。
  • 水素クラスター(注2)を有する電解液と組み合わせることによって、金属カルシウムを負極に用いた蓄電池の安定動作が実現します。
  • 希少な元素を含まない高エネルギー密度蓄電池であるカルシウム蓄電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電を達成しました。

【概要】

電気自動車やスマートグリッド(注3)などのエネルギーシステムを社会全体に普及させることに向けて、資源が豊富で、蓄えられるエネルギー量が大きい次世代の蓄電池が求められています。カルシウムは地殻中に5番目に多く存在し、安価で入手しやすい元素です。金属カルシウムを用いることで高いエネルギー密度も実現可能であるため、カルシウムイオンやその金属を用いたカルシウム蓄電池が注目され始めています。一方、安定性や可逆性を有する電極材料や電解液が課題となっており、数十サイクル以上の繰り返し充放電可能な電池は、これまで報告されてきませんでした。

東北大学 金属材料研究所の木須一彰助教と同大学材料科学高等研究所(AIMR)の折茂慎一所長(金属材料研究所教授を兼務)、トヨタ北米先端研究所のRana Mohtadi博士(AIMR主任研究者を兼務)の研究グループは、天然鉱物としても知られるコベライト(銅藍、硫化銅)に着目し、ナノ粒子化と炭素材料との複合化を行うことで、カルシウムイオンが大量に貯蔵可能な正極材料を開発しました。さらに水素クラスターを含む電解液を用いることで、コベライト正極とカルシウム金属負極を組み合わせた電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電を実現しました。

本成果は、2023 年 5 月 19日(オランダ時間)に国際学術誌Advanced Science にオンライン掲載されました。

図1. カルシウム蓄電池の概略図(上)と、本研究で開発した電池の繰り返し充放電特性(下)。横軸は繰り返し充放電回数、左縦軸は各充放電における充電容量および放電容量を示している。

【用語解説】

注1. コベライト:銅の硫化鉱物(硫化銅、CuS)であり、日本では銅藍とも呼ばれる。鉱物の発見者であるイタリア人Nicolas Covelliに因んで英名が付けられている。

注2. 水素クラスター: 中心原子に複数の水素原子が結合した分子構造を持つイオン。[CB11H12]の場合、1個のCと11個のBで構成する中心原子の周りに12個のH結合しています。

注3. スマートグリッド:電気利用量をリアルタイムで把握し、そのデータを活用して電力の有効利用を実現するエネルギーシステム。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 金属材料研究所 水素機能材料工学研究部門 助教
木須一彰(きす かずあき)
TEL: 022-215-2094 FAX: 022-215-2091
E-mail: kazuaki.kisu.b2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 所長・教授
東北大学 金属材料研究所 水素機能材料工学研究部門 教授
折茂慎一(おりも しんいち)
TEL: 022-217-5130 FAX: 022-217-5129
E-mail: shin-ichi.orimo.a6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144 FAX: 022-215-2482
E-mail: imr-press*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146 FAX: 022-217-5129
E-mail: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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