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歯数や歯周病と海馬の萎縮速度との関連を解明 重度の歯周病の歯を残すことは海馬の萎縮速度を速める可能性あり

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科加齢歯科学分野/病院口腔機能回復科 講師 山口哲史
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 55歳以上の地域住民を対象としたコホート研究のデータを用いて、歯数や歯周病と海馬の萎縮との関連を解析しました。
  • 軽度の歯周病では歯の数が多いほど左海馬の萎縮は遅くなるのに対し、重度の歯周病では歯の数が多いほど左海馬の萎縮が速いことを明らかにしました。
  • 重度の歯周病の歯を残すことは、海馬の萎縮を速める可能性があることを示唆しています。

【概要】

歯の喪失や歯周病がアルツハイマー病のリスクを高める可能性が指摘されてきましたが、歯周病の歯を残すことと歯を失うことのどちらがアルツハイマー病の初期に生じる海馬の萎縮と関連するかは不明でした。

東北大学病院口腔機能回復科および大学院歯学研究科加齢歯科学分野の山口哲史講師らの研究グループは、コホート研究である大迫研究(注1)(おおはさまけんきゅう)のMRI健診参加者を対象に、歯数や歯周病と4年間の海馬の萎縮速度との関連を解析しました。その結果、軽度の歯周病では歯が少ないほど、重度の歯周病では歯が多いほど、左海馬の萎縮が速いことを明らかにしました。

この結果は、単に歯を多く残すだけでなく、健康な歯を残すことが重要であることを示しています。45歳以上の過半数が歯周病を有している日本において、重度の歯周病の歯を残すことが海馬の萎縮を速めるという本研究の結果は、認知症予防の考え方に大きな影響を与える可能性があり、今後はより大規模な研究によって検証を進める必要があります。

本研究成果は、2023年7月5日午後4時(現地時間、日本時間7月6日午前5時)米国神経学会学会誌Neurology (オンライン版)に掲載されました。

図. 歯周病の4つの重症度における歯数と左海馬萎縮速度との関連
平均歯周ポケットの深さは、値が大きいほど各歯の歯周病が重度であることを示します。各グラフの縦軸は、値が小さいほど左海馬の萎縮速度が速いことを示します。グラフの傾きが左下がりの場合は歯数が少ないほど、右下がりの場合は歯数が多いほど萎縮速度が速いことを示します。 *統計学的に有意な傾き(偏回帰係数)(P<0.05)

【用語解説】

注1. 大迫研究:岩手県花巻市(旧 稗貫郡)大迫町で1986年から30年以上にわたり継続している高血圧と循環器疾患に関する前向きコホート研究です。住民の家庭血圧測定や脳MRI撮影を継続して実施している点が特徴です。歯科検診は2005年から開始し、歯の本数や歯周炎の状態など、口腔内の健康情報を記録しています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 口腔機能回復科
(大学院歯学研究科 加齢歯科学分野)
講師 山口哲史(やまぐち さとし)
TEL: 022-717-8396
E-mail: satoshi.yamaguchi.a3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-7149
FAX: 022-717-8931
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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