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トマトの接ぎ木によるエピゲノム変化 ―同一品種間の接ぎ木で乾燥ストレス耐性を獲得―

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 東谷篤志
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ナス科やウリ科の作物の多くでは、強く丈夫な根を台木とした異なる品種間での接ぎ木栽培が広く行われています。
  • トマト品種「桃太郎」の上部と下部を切断・再結合する自家の接ぎ木処理を行ったところ、乾燥ストレス耐性が獲得されました。
  • 接ぎ木処理した茎頂の組織においてエピゲノム(注1)変化が生じ、多数の遺伝子発現の変動を生じさせることが明らかになりました。
  • 接ぎ木は、強く丈夫な台木の根の利用以外に、その手技による傷害再生の過程で、先端の茎頂組織におけるエピゲノム変化も生じさせ、継続的な効果を及ぼすことが示唆されました。

【概要】

ナス科やウリ科の作物の多くは、異なる品種で強く丈夫な根を台木とし、穂木に優良な実をつける品種をつなぐ、接ぎ木による栽培が古くから広く行われています。接ぎ木栽培では、台木の根から養水分の吸収が旺盛になることや病害抵抗性が付与されるなど、優良な実を多く収穫できるようになります。

東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授らの研究グループは、今回、トマト品種「桃太郎」の上部と下部を切断・再結合する自家の接ぎ木処理を行ったところ、処理を行わない「桃太郎」と比較して、茎頂組織において染色体ヒストンならびにDNAのメチル化を介したエピゲノム変化が生じること、その結果、ストレス耐性をはじめとする多数の遺伝子発現に変化が生じ、乾燥ストレス耐性が獲得されることを見出しました。

本成果は、植物の接ぎ木手技により新たなストレス耐性の獲得が期待されることを示唆します。本成果は、2023年7月15日付けでDNAや遺伝情報に関する専門誌DNA Researchに掲載されました。

図1. トマト自家接ぎ木における茎頂組織でのエピゲノム変化。

【用語解説】

注1. エピゲノム:それぞれの生物が有するDNAの塩基配列をゲノムと呼ぶことに対して、そのゲノム上に加えられた修飾(染色体ヒストンタンパク質のメチル化やアセチル化ならびにDNAのメチル化など)により、それぞれの遺伝子を発現させるか、させないかなどの制御がなされる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 東谷 篤志
TEL: 022-217-5715
E-mail: atsushi.higashitani.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか(たかはしさやか)
TEL: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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