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細胞分裂を制御する酵素Aurora Aが遺伝性乳がん関連分子を制御する新機構を発見 -Aurora Aがユビキチン化能を持ち、中心体の成熟を促進-

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所腫瘍生物学分野 教授 千葉奈津子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • がんで高発現などの異常が見られる分裂期キナーゼ(注1Aurora A(注2が、遺伝性乳がんの原因遺伝子BRCA1(注3の結合分子OLA1をユビキチン化(注4して、中心体(注5局在を減少させることを明らかにしました。
  • Aurora AによるOLA1のユビキチン化が、G2期の中心体の成熟を促進し、その異常が中心体数の増加を起こすことで、発がんや悪性化の原因になると考えられます。
  • Aurora Aの異常による新たな発がんの仕組みを明らかにしたことで、遺伝性乳がんを含めた、多くのがんの研究に貢献すると期待されます。

【概要】

細胞分裂時の染色体分配に重要な働きをする中心体の異常は、発がん過程やがんの悪性化を促進します。東北大学加齢医学研究所 腫瘍生物学分野 千葉 奈津子教授らは、変異によって遺伝性乳がん・卵巣がん症候群を引き起こす遺伝子BRCA1が、OLA1と結合して中心体の複製を制御し、その機能破綻が発がんに関与することを明らかにしてきました。

今回、東北大学 加齢医学研究所 腫瘍生物学分野 方 震宙助手、同大学院生命科学研究科大学院生の 李 星明氏、加齢医学研究所 腫瘍生物学分野 吉野 優樹助教、同大学大学院医学系研究科 森 隆弘教授(現所属:沖縄県立中部病院 腫瘍内科)らとの研究グループで、分裂期キナーゼAurora Aが、OLA1をユビキチン化して、細胞周期のG2期の中心体局在を減少させることを明らかにしました。またこのユビキチン化が、分裂期キナーゼNEK2によるOLA1のリン酸化によって促進されること、さらにG2期以降の中心体成熟を促進することを明らかにしました。 Aurora Aの異常は多くのがんで見られ、これまでキナーゼ活性が注目されていましたが、新たにユビキチン化能も重要であることを明らかになり、Aurora Aの異常による新たな発がん機構が明らかになりました。

本研究成果は2023年7月21日、Cell Reports誌に掲載されました。

図3. 中心体成熟のモデル

【用語解説】

注1.細胞分裂期に働く、タンパク質をリン酸化する酵素。

注2.Aurora A:分裂期キナーゼの1つで、中心体、紡錘体極に局在し、細胞分裂に進行に重要な役割を果たす。PLK1をリン酸化して活性化する。

注3.BRCA1:BRCA2とともに、遺伝子変異により遺伝性乳がん・卵巣がん症候群をひきおこすがん抑制遺伝子。

注4.ユビキチン化:タンパク質の修飾機構の1つで、ユビキチンリガーゼにより、ユビキチンタンパク質が標的タンパク質に付加される。タンパク質分解、DNA修復などのシグナルになる。

注5.中心体:核の近くの細胞質に存在する細胞内小器官であり、中心小体と、その周囲の中心小体周辺物質(pericentriolar material; PCM)からなる。中心小体は母中心小体と、その側壁に結合する娘中心小体からなり、L字型の構造をとる。中心小体周辺物質には-tubulin環が存在し、細胞骨格の一つである微小管の形成起点として働く。細胞分裂期には、中心体から微小管が伸長し、紡錘体極として紡錘体を形成し、染色体の均等な分配に機能する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学加齢医学研究所 腫瘍生物学分野
教授 千葉 奈津子
TEL: 022-717-8477
E-mail: natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学加齢医学研究所
広報情報室
TEL: 022-717-8443
E-mail: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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