本文へ
ここから本文です

人と犬のがんに共通した転移メカニズムを発見した ―悪性黒色腫の治療につながる世界初の発見―

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科分子薬理学分野 教授 加藤幸成
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 人と犬の粘膜に発生する悪性黒色腫において、ポドプラニン(PDPN)と呼ばれる膜タンパク質が高発現している患者の予後が短いことを発見しました。
  • PDPNによりアメーバのように自由自在に形を変えることで正常細胞の隙間をくぐり抜けられる転移能の高い細胞(アメーバ様遊走細胞)を生み出していることを明らかにしました。
  • 本成果はPDPNが人と犬の悪性黒色腫に共通した転移メカニズムを制御しており、新たな治療標的として有望であることを示すとともに、人の悪性黒色腫と共通性を有する犬の悪性黒色腫が、がん研究において重要な位置付けを有すること示した貴重な研究成果です。

【概要】

東京大学大学院農学生命科学研究科の西村亮平教授と東北大学大学院医学系研究科の加藤幸成教授の研究グループは、ポドプラニン(PDPN,注1)と呼ばれる膜タンパク質の発現が高い人・犬の粘膜由来の悪性黒色腫(注2)の患者は予後が短いことを発見しました。さらに、犬悪性黒色腫細胞を用いた機能解析により、PDPNが下流のRho-associated kinase (ROCK) - Myosin light chain 2 (MLC2)シグナル(注3)を活性化することで、腫瘍細胞のアメーバ様遊走(注4)を誘起し、腫瘍細胞の増殖・浸潤・転移を促進していることを解明しました。さらに、人と犬の患者検体を用いた解析により、人と犬の粘膜由来悪性黒色腫において、共通したメカニズムでPDPNが腫瘍転移を促進している可能性を見出しました。

人や犬が罹患する粘膜由来の悪性黒色腫は転移率が高く、早期に遠隔転移を引き起こし予後が悪いといった共通の特徴を示す悪性腫瘍です。転移率が高いものの、これまで転移を制御する詳細なメカニズムはよくわかっていませんでした。本成果は、PDPNが粘膜由来の悪性黒色腫の新たながん治療の標的として有望であることを示し、さらに、犬に自然発生する悪性黒色腫が人の悪性黒色腫の研究においても重要な価値を持つことを明らかにしました。

PDPNは正常組織との境界部で腫瘍細胞のアメーバ様遊走を誘起し、腫瘍細胞の増殖・浸潤能を亢進し、転移を促進する。

【用語解説】

(注1)ポドプラニン(PDPN)
リンパ管やリンパ節などで発現し、細胞収縮などを担っている。種々の悪性腫瘍において過剰発現が報告されている。

(注2)悪性黒色腫
メラノーマとも呼ばれる。黒い色素を持つ細胞(メラノサイト)が腫瘍化して発生する悪性腫瘍。

(注3)Rho-associated kinase (ROCK) - Myosin light chain 2 (MLC2)シグナル
活性化したROCKは下流のMLC2を活性化し、Myosin Ⅱのモーター活性を上昇させ、アクチン-ミオシン縮合により細胞の収縮力を増大させる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関する問合せ)
東北大学大学院医学系研究科 分子薬理学分野 教授
加藤 幸成
Tel: 022-717-8207
Fax: 022-717-8207
E-mail: yukinarikato*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関する問合せ)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
Tel: 022-717-7891
Fax: 022-717-8187
E-mail: pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs03

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ