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未利用磁石材料の電気的制御で新発見 ~磁気八極子と磁気双極子は電流応答に決定的な差異~

【本学研究者情報】

〇電気通信研究所 教授 深見俊輔
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • マクロには磁力を持たないが、電気的には磁石と似た性質を示す「ノンコリニア反強磁性体[注1]」の情報デバイス応用に向けた研究が進められている。
  • ノンコリニア反強磁性体を電流で制御する際、その状態を記述する「磁気八極子」は、一般的な磁石の「磁気双極子」とは逆方向に回転することを発見。
  • ノンコリニア反強磁性体を用いたスピントロニクス[注2]素子の実現に向け重要な知見が確立。

【概要】

スピントロニクス研究の進展により、微細な磁石の磁化を電流で制御するメモリなどが実現され、超省エネ半導体への展開を目指した研究開発が進められています。近年のスピントロニクス分野では全体としては磁力を持たないものの電気的には磁石と似た性質を示す「ノンコリニア反強磁性体」が新たな機能性材料として注目されています。ノンコリニア反強磁性体の状態は「磁気八極子」で記述でき、これは一般的な磁石材料の「磁気双極子(N極/S極の方向)」[注3]と類似したものと考えられています。

このたび、東北大学と米国マサチューセッツ工科大学の研究チームはノンコリニア反強磁性体を電流で制御する際の一般的な磁石材料との大きな違いを発見しました。

研究チームは、ノンコリニア反強磁性体の電流への応答を詳しく調べ、「磁気八極子」は一般的な磁石材料の「磁気双極子」とは真逆の方向に回転することを明らかにしました。また詳細な測定と理論モデルの構築を通し、この性質がノンコリニア反強磁性体の特異な磁気構造に由来していることを解明しました。

電流と磁石材料の相互作用の理解はスピントロニクス素子応用に向けた基盤となるものです。今回得られた知見を土台にして、ノンコリニア反強磁性体の工学利用に向けた研究開発が進展することが期待されます。

本研究成果は、2023年8月3日(英国時間)に出版される材料科学分野の学術誌Nature Materialsに掲載されました。

図1. 実験で用いたノンコリニア反強磁性体Mn3Snの薄膜の断面電子顕微鏡像(左)と、互いに打ち消し合うように配列したMn原子の磁気モーメントの秩序(カイラルスピン構造)の模式図。

【用語解説】

注1. ノンコリニア反強磁性体
反強磁性体は、結晶内で隣り合う原子のスピン(電子が持つ磁石の性質)同士が打ち消しあい、見かけ上は全体に磁気を持たないようにみえる物質。一般的な反強磁性体は隣り合うスピンが正反対の向きに共線的(コリニア)に並ぶ性質を持ち、コリニア反強磁性体と呼ぶこともある。これに対して図1のようにスピン同士が非共線的(ノンコリニア)に並んで全体の磁力を打ち消しあっている磁性体をノンコリニア反強磁性体と呼ぶ 。

注2. スピントロニクス
電子の持つ電気的性質(電荷)と磁気的性質(スピン)を同時に利用することで発現する物理現象を明らかにし、工学的に利用することを目指す学術分野。例えば従来は不可能であった磁気的性質や磁化方向の電気的な検出や制御(スピントルク磁化反転)、電気伝導特性の磁場や磁化による制御などが可能となり、現在も様々な現象が発見され続けている。

注3. 磁化、磁気双極子
強磁性体(いわゆる磁石)ではN極とS極が対になって現れる。磁気双極子(または磁気双極子モーメント)はベクトル量であり、その大きさはN極、S極の磁荷とN極とS極の間隔の積であり、その方向はS極からN極に向かう向きで定義される。磁化は単位体積当たりの双極子磁気モーメントの総量で定義される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
教授 深見 俊輔
TEL: 022-217-5555
E-mail: s-fukami*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学電気通信研究所 総務係
TEL: 022-217-5420
E-mail: riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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