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抗がん剤開発の発端として期待されるアルカロイドの化学合成に世界で初めて成功

【本学研究者情報】

大学院薬学研究科 医薬製造化学分野
教授 徳山英利
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 強力な抗がん剤のリード化合物(注1)として期待されながら、これまで有効な合成法が存在しなかった海洋アルカロイド(注2)、ディスコハブディンBの化学合成を世界ではじめて達成しました。
  • ディスコハブディンBを共通中間体として、より複雑で合成が困難な類縁化合物であるディスコハブディンH, ディスコハブディンK、およびアリューシャナミンを網羅的に合成する経路を確立しました。

【概要】

 Latrunculia属の海綿から単離される海洋アルカロイドであるディスコハブディン類は、抗腫瘍活性や抗マラリア活性をはじめとする強力かつ多様な生物活性を示し、抗がん剤の候補化合物として期待されている化合物群です。これまでに単離された50種以上の類縁体の大部分(34種)を占める硫黄と窒素原子の架橋構造を有する類縁体は、合成難易度が極めて高く、その中の1化合物しか合成がされていませんでした。このように合成経路の確立が強く望まれているディスコハブディン類は、天然物合成の分野では最も化学合成が難しいアルカロイドとして広く知られています。

 東北大学大学院薬学研究科の徳山英利教授の研究グループは、合成終盤に硫黄および窒素原子の架橋構造を構築する独自の合成戦略により、ディスコハブディンBの世界初の不斉全合成を達成しました。さらに、ディスコハブディンBの合成経路を経て、ディスコハブディンH、 ディスコハブディンK、およびアリューシャナミンの3種の類縁体を網羅的に合成することに成功しました。今回開発した合成戦略は、未だ化学合成が達成されていないチオディスコハブディン類の化学合成に応用可能であり、創薬研究や生合成経路の解明に大きく寄与することが期待されます。

 本研究成果は、米国化学会誌Journal of the American Chemical Societyに令和5年8月9日に掲載されました。

図1. ディスコハブディンB,H,Kおよびアリューシャナミン



【用語解説】

注1 リード化合物
医薬品開発の出発点となる新薬候補化合物のこと。天然有機化合物は、構造および生物活性の多様性が高く、有用なリード化合物となる。

注2 アルカロイド
窒素原子を含む天然有機化合物の総称。アルカロイドという名称は、大部分の化合物が塩基性を示すことから、アルカリ(塩基性)に由来する。その多くが多様な生物活性を示し、医薬品に用いられる医薬資源として知られる。またアルカロイドは、医薬品だけでなく、コーヒーに含まれるカフェインやタバコの葉に含まれるニコチンなど、嗜好品にも含まれている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部
教授 徳山英利
TEL: 022-795-6878
E-mail: hidetoshi.tokuyama.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
   

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 
総務係
TEL: 022-795-6801
E-mail: ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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