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金属有機構造体(Metal-Organic Framework:MOF) において光照射により予期せぬ超高速構造変化を発見 -光励起による強誘電性発現などにより新規超高速光応答デバイスの開発へ-

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 宮坂等
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 金属有機構造体(MOF)結晶において、光照射によって結晶構造変化を伴う新しい電荷秩序状態が室温において生じることを発見。
  • 10兆分の1秒のパルス幅のレーザーを用いた超高速時間分解分光計測により、光誘起過渡状態において予期せぬ構造変化を示す結果を得た。
  • MOF結晶をベースとした新しい光応答物質の開発にあたり、その基本概念を変更させる重要な知見であり、光誘起強誘電性などの超高速光応答性物質の新規開発に期待。

【概要】

東京工業大学 理学院 化学系のSamiran Banu(サミラン・バヌ)大学院生(博士後期課程3年)と石川忠彦助教、腰原伸也教授らの研究チームは、東北大学 金属材料研究所の宮坂等教授および高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の岩野薫講師(故人)の研究チームと共同で、金属有機構造体(Metal-Organic Framework:MOF、用語1)結晶において、室温下での光励起(用語2)を行うと、超高速結晶構造変化を伴う新しい電子状態が発生することを明らかにした。この状態が光励起特有の隠れた秩序状態であることも分かった。

室温より高温で電荷移動型相転移(用語3)を起こすMOF結晶である(NPr4)2[Fe2(Cl2An)3]において、室温で10兆分の1秒のパルス幅の超短パルスレーザー光による時間分解分光を行った結果、有機分子イオン周りの局所的な反転対称性の破れ(用語4)を伴う、当初予期しなかった光誘起構造変化を示す反射率スペクトルを得た。

本研究成果は、MOFの構造が強固だという従来の思い込みを覆し、多彩なMOF結晶が、光励起により超高速な結晶構造変化を伴う新しい電荷秩序状態を生ずる物質の候補であることを示している。MOF結晶の多孔質性を活かしたフォトクロミズム(用語5)や、光磁性デバイスの開発の端緒となるだけでなく、マクロな反転対称性の破れによる強誘電体(用語6)の光制御の可能性を開くものである。

本研究成果は、9月13日付の「Advanced Optical Materials」に掲載された。

. (NPr4)2[Fe2(Cl2An)3]での光誘起状態変化のイメージ。

【用語解説】

(1)金属有機構造体:金属イオンと有機分子イオンがネットワーク状に繰り返し結合した構造を持つ物質。多孔性や大きな比表面積を持つことが特徴であり、主にガスの選別・貯蔵や触媒活性の場として注目されている。

(2)光励起:試料に光照射をおこないエネルギーを注入し、励起状態をつくること。

(3)電荷移動型相転移:温度変化などにより、結晶を構成している電子供与体分子と電子受容体分子の間で自発的に電子のやり取りが起き、構成分子の価数が変わる相転移。

(4)反転対称性の破れ:空間座標の正負を入れ替えた時に状態が変わらないことを、反転対称性がある、と言い、変化する場合を「反転対称性の破れ」と表現する。

(5)フォトクロミズム:光照射により物質の色が変わる現象。

(6)強誘電体:外場によらずマクロな分極が自発的に生じている物質を指す。代表例として、BaTiO3などがある。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 
教授 宮坂 等
TEL:022-215-2030
E-mail:miyasaka*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 
情報企画室広報班
TEL:022-215-2144
E-mail:press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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