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胸部レントゲン写真の経時変化から心不全の危険を予測

【本学研究者情報】

〇医学系研究科循環器内科学分野 教授 安田聡
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • これまでの研究では、胸部レントゲン写真による心胸比(CTR)(注1)と心機能は関連しないことが報告されてきました。
  • 1回のレントゲン写真ではなく、経年的な胸部レントゲン写真の心胸比を評価することで、将来的な心不全注2)の発症予測が可能なことを初めて明らかにしました。
  • 胸部レントゲン写真の経時変化から心不全発症を予測する可能性が示唆され、今後新たな診断・治療戦略に繋がることが期待されます。

【概要】

心不全は世界的に主要な死因であり予防が重要です。これまで、心臓に構造的・機能的な異常が認められるものの心不全症状がないステージBから症状を有するステージCへの進行予測が可能かどうかについて、様々な研究が行われてきました。その中で、安全性が高いことから健診で活用される胸部レントゲン検査を用いた研究では、レントゲン写真から測定されるCTRと心臓の機能は関連がないと言われていました。

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、後岡広太郎准教授らの研究グループは、NECソリューションイノベータ株式会社(本社:東京都江東区新木場、代表取締役 執行役員社長 石井 力、以下 NECソリューションイノベータ)と共同で、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究(注3)に登録された心不全ステージB(注2)の患者のデータを解析し、心胸比の経時的な変化を評価しました。その結果、登録時CTR>53%かつ、年間のCTRが0.5%ずつ上昇する(心陰影が拡大していく)患者は、心不全を発症する危険が高いことを明らかにしました。

本研究成果より、胸部レントゲン写真での簡易な測定項目であるCTRの経時変化を調べることで、心不全発症の予測が可能であることが示唆されました。今後新たな診断・治療戦略に繋がることが期待されます。

本研究成果は2023年9月17日に、International Journal of Cardiology Heart and Vasculature誌にオンライン掲載されました。

図1. 心胸比(CTR)の測定方法

【用語解説】

注1. CTR(心胸比):肺の幅に対する心臓の幅の割合。

注2. 心不全:心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、生命を縮める進行性の病気。心不全ステージ分類を用いることで適切な治療を適切なタイミングで行うことを目的とする。日本循環器学会/日本心不全学会合同の急性・慢性心不全診療ガイドラインではリスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者を「ステージA:器質的心疾患のないリスクステージ」、器質的心疾患を有するが心不全症候のない患者を「ステージ B:器質的心疾患のあるリスクステージ」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者を既往も含め「ステージ C:心不全ステージ」、さらに「ステージ D:治療抵抗性心不全ステージ」と定義する。

注3. 第二次東北慢性心不全登録研究(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2, CHART-2):東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の予後に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、2021年まで追跡調査が行われた国内最大の慢性心不全の疫学研究。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
循環器内科学分野
教授 安田 聡(やすだ さとし)
TEL: 022-717-7152
E-mail: syasuda*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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