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一酸化窒素吸入負荷試験から心不全の予後と治療反応を予測

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科循環器内科学分野 教授 安田聡
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 心不全はいまだに治療困難な症例が多く、予後や治療への反応を予測する検査が必要とされています。
  • 肺血管病変を伴う難治性心不全である肺高血圧分類2群(Group2 PH)(注1)心不全症例を対象に、一酸化窒素吸入負荷試験(NO吸入負荷試験)(注2)を実施した結果、肺動脈楔入圧(注3)の上昇がみられた症例では、心不全再入院率が高く、予後が悪いことを明らかにしました。
  • NO吸入負荷試験から肺動脈楔入圧の変化率を分析することで、心不全の予後と治療反応性を予測し、新たな治療戦略につながることが期待されます。

【概要】

心不全は心臓から血液を送る力が低下し、息切れや体の浮腫(むくみ)がみられ、生命に関わる世界的にも主要な疾患です。特に肺動脈の拡張障害を伴う心不全Group2 PH心不全は検査法や治療法が未確立で、予後も不良です。一方、NO吸入負荷試験は、主に肺高血圧症の肺血管機能を評価する検査法で、カテーテル検査中に一酸化窒素を吸入し、その際の心臓・肺血管の圧力変化から肺血管治療反応性を予測することに用いられています。

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、矢尾板信裕院内講師、佐藤大樹助教らの研究グループは、心不全に対するNO負荷試験の有用性に着目し、東北大学病院でカテーテル検査を受けたGroup2 PH心不全症例のデータを後ろ向きに解析しました。その結果、NO負荷試験で心臓の負担を示す肺動脈楔入圧の上昇がみられた症例では、心不全再入院率が高く、予後が悪いことを明らかにしました。今後、心不全に対する新たな治療戦略につながることが期待されます。

本研究は2023年9月29日に心不全研究の専門誌ESC heart failure誌にオンライン掲載されました。

図1. 心不全入院と全死亡の複合エンドポイント NO吸入後に肺動脈楔入圧が上昇する群においては、有意に心不全入院、もしくは死亡などのイベントが発生しました。

【用語解説】

注1. 肺高血圧分類2群(Group2 PH):肺血管の機能障害を伴った心不全。

注2. 酸化窒素吸入負荷試験(NO吸入負荷試験):一酸化窒素 NOはNitric oxideの略称です。心血管系において長く研究される血管拡張に関する重要な因子です。

注3. 肺動脈楔入圧:カテーテル検査で評価する指標の一つで左房圧を反映します。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
循環器内科学分野
教授  安田 聡
TEL: 022-717-7153
E-mail: syasuda*cardio.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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