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冠動脈疾患患者においてがんと心房細動の既往歴は予後不良と関連する

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科循環器内科学分野 教授 安田聡
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • がんと冠動脈疾患(注1)や心房細動(注2)を含む心臓病は日本人の死因の第1,2位を占めます。
  • がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者は、抗凝固薬使用が適切に行われていることを明らかにしました。
  • 一方で、がんの既往と心房細動を合併する冠動脈疾患患者は、脳卒中と血栓症と出血の複合イベント、あらゆる理由による死亡、がんに関連した死亡、心不全で入院するリスクが高いことと関連しており、特に注意深く経過を見る必要があることが示唆されました。

【概要】

がんは日本人の死因の第1位を、冠動脈疾患や心房細動等の心臓病は第2位を占めます。そのため、がんと心臓病を同時にもつ患者の予後は良くないことが推測されていましたが、その実態に関する研究は十分ではありませんでした。

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、後岡広太郎准教授らの研究グループは、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究(注3)に登録された冠動脈疾患患者のデータを解析し、がんの既往や心房細動合併と、冠動脈疾患の予後との関連を評価しました。その結果、がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者では、経年的に抗凝固薬(注4)の処方率が上昇しており、抗凝固治療が適切に行われていることが示されました。一方、がんの既往と心房細動を合併する冠動脈疾患患者は、脳卒中、血栓症、出血や、がんに関連した死亡、心不全で入院するリスクが高いことと関連していました。

本研究成果より、がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者の診療においては、特に注意深く経過を見ていく必要があることが示唆されました。

本研究成果は2023年10月11日に、International Journal of Cardiology Heart and Vasculature誌にオンライン掲載されました。

図1. 本研究結果の概要:がんの既往があり心房細動を合併している患者に対して抗凝固薬の使用率は上昇し、適正使用が示唆されたにも関わらず、その予後は不良であった。

【用語解説】

注1. 冠動脈疾患: 心臓の心筋に十分な血液が供給されないために起こる病気で、心筋に血液を供給する冠状動脈の血流が悪くなることによって生じる。

注2. 心房細動:脈が不規則になる不整脈という病気の1つで、心房が細かく動いてけいれんしている状態。

注3. 第二次東北慢性心不全登録研究(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2, CHART-2):東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の予後に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、2021年まで追跡調査が行われた国内最大の慢性心不全の疫学研究。

注4. 抗凝固薬:血液を固まらせないようにする医薬品。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
循環器内科学分野
教授 安田 聡(やすだ さとし)
TEL: 022-717-7152
Email: syasuda*cardio.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press*pr.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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