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クラゲの触手はなぜ素早く再生できるのか? ――常在する幹細胞と再生特異的な未分化細胞の協調――

【発表のポイント】

  • クラゲの触手は切断後2-3日以内に機能的な再生を示しますが、その過程で損傷に応答して出現する再生特異的な増殖性の未分化細胞が再生芽を形成することを見出しました。
  • 触手に常在する幹細胞は再生過程においても分化細胞系列を供給する一方で、再生特異的な未分化細胞は新しく形成される触手の上皮細胞へと分化することを明らかにしました。
  • 再生特異的な未分化細胞はイモリなどの再生可能な左右相称動物でも見つかっていることから、動物門ごとに再生芽形成機構が独自に進化した可能性を示唆しました。

【概要】

 東京大学大学院薬学系研究科の冨士田壮佑特任研究員、三浦正幸教授、中嶋悠一朗講師らによる研究グループは、東北大学と共同で、刺胞動物のエダアシクラゲを用いて、触手再生過程において特異的に出現する未分化細胞が再生芽を形成して、常在する幹細胞と協調することで迅速な器官再生を実現する仕組みを明らかにしました。損傷後の器官や組織の再生において、未分化性の増殖性細胞を含む再生芽(注1)の形成は、それぞれの器官や組織が再生可能かどうかを決める最も重要なプロセスの1つです。これまでの再生研究の多くは左右相称動物(脊椎動物や節足動物など)を用いて行われてきたこともあり、それ以外の動物における再生芽形成メカニズムはほとんど不明でした。本研究グループは、再生能力が高いことで知られる刺胞動物(注2)のエダアシクラゲを用いて、触手の切断部位近傍に未分化細胞が集積して再生芽を形成することを見出しました。また、再生芽を形成する未分化細胞は増殖能や分化能を含む幹細胞としての特徴を示すものの、常在する幹細胞とは異なる由来と機能を示し、特に新しく形成される触手の上皮細胞に選択的に分化することを明らかにしました。再生特異的に出現する未分化細胞は、左右相称動物のイモリの肢再生などでもその関与が示唆されていることを考えますと、本研究成果は、動物門ごとに複雑な器官や形態を獲得する中で再生芽形成メカニズムが独自に進化した可能性を示唆します。

 

エダアシクラゲ触手再生における常在幹細胞と再生特異的な未分化細胞の概念図

【用語解説】

注1. 再生芽
失われたり損傷したりした組織や器官が再生する際に形成される細胞の塊のこと。新しく構築される組織や器官のタネ細胞として、様々な細胞種に分化できる未分化性や増殖能を示す細胞を含む。

注2. 刺胞動物
刺胞動物門は、大きく花虫綱/花虫亜門(Anthozoa)とクラゲ亜門(Medusozoa)の2つに分けることができる。胚、幼生、ポリプ、メデューサ(いわゆるクラゲ)といった多様な生活環を示す。幼生やポリプのステージは刺胞動物のほとんどの種に含まれるが、クラゲ亜門はメデューサのステージを含む。

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問い合わせ先

東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部
特任准教授 藤原英明(ふじわら ひであき)
TEL: 022-795-5259
Email: hideaki*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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