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Bリンパ球の分化に重要な転写因子間の相互作用を発見 -BACH2とIRF4の機能バランスが大事!-

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科生物化学分野 助教 落合恭子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 免疫に関わるリンパ球の1種であるB細胞(注1が抗体を産生するためには、2つの転写因子(注2の機能バランスが重要であることを発見しました。
  • 転写因子BACH2(注3とIRF4(注4は、B細胞の抗体産生を協調的に誘導していることがわかりました。
  • BACH2が欠損すると、IRF4機能が異常になることで抗体産生細胞への分化が促進していることがわかりました。
  • この研究成果により、抗体による生体防御能を高める戦略や自己免疫疾患の治療の開発につながることが期待されます。

【概要】

新型コロナウイルスのパンデミックで注目されたように、抗体は生体からの病原体の排除に重要です。生体内で抗体を産生する形質細胞(注5はB細胞から分化しますが、この分化過程の詳細は明らかとなっていません。

東北大学大学院医学系研究科生物化学分野の落合 恭子助教、五十嵐 和彦教授らの研究グループは、B細胞において転写因子BACH2とIRF4が互いの機能を調節し合って形質細胞の分化を制御していることを発見しました。さらにBACH2欠損マウスのB細胞では、IRF4機能が異常になり、形質細胞への分化が促進されることを突き止めました。

本研究はBACH2とIRF4の機能関連性を明らかにした新たな形質細胞分化モデルです。将来、両転写因子の機能を調節することで抗体による生体防御能を高める戦略や自己免疫疾患の治療の開発につながることが期待されます。

本研究の成果は、2024年4月11日に欧州分子生物学研究機構の機関誌The EMBO Journalに掲載されました。概要は、YouTube の医学系研究科公式チャンネルでもご覧いただけます。

図1.(左)分化前のB細胞では、BACH2が形質細胞遺伝子を強固に抑制している.(中央)B細胞が抗原によって刺激されると、これらの遺伝子は活性化できる状態になるが、IRF4がBACH2を活性化するので形質細胞遺伝子は抑制されたままになる。(右)IRF4がさらに活性化すると、形質細胞遺伝子の発現を誘導して分化を促進する。

【用語解説】

注1. B細胞:リンパ球の一つでBリンパ球とも呼ばれる。抗体産生を担う形質細胞に分化できる唯一の細胞。抗体は抗原(病原体などに由来するペプチド)に結合する血中タンパク質で、病原体の排除や処理を促す。

注2. 転写因子:「遺伝子の発現(転写)」を調節するタンパク質。転写を活性化するもの、転写を抑制するものがある。

注3. BACH2:抗体クラススイッチに不可欠な転写抑制因子。

注4. IRF4:抗体機能の向上と形質細胞分化の双方に不可欠な転写因子。転写活性化と転写抑制の双方に働く。

注5. 形質細胞: B細胞は抗体産生細胞である形質細胞に分化する。形質細胞への分化過程では、多くの遺伝子発現がダイナミックに変化する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科生物化学分野
助教 落合 恭子 (おちあい きょうこ)
TEL: 022-717-7597
Email: kochiai*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-8032
FAX:022-717-8931
Email:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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