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モデルナと国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構、日本で潜在性ウイルスの抗体保有率などを把握する共同研究を開始

【本学研究者情報】

〇東北メディカル・メガバンク機構災害感染症学分野 教授 児玉栄一
東北メディカル・メガバンク機構ウェブサイト

【概要】

Moderna Inc.(以下、「モデルナ」)の日本法人モデルナ・ジャパン株式会社(東京都港区、代表取締役社長:長山和正、以下、「モデルナ・ジャパン」)は本日、モデルナと国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(宮城県仙台市、機構長:山本雅之、以下、「ToMMo」)が、2つの一般的な潜在性ウイルスであるサイトメガロウイルス(CMV)** およびエプスタインバーウイルス(EBV)***の感染疫学を明らかにする共同研究を開始したことをお知らせいたします。この共同研究を通じて、モデルナとToMMoは、潜在性ウイルスの抗体保有率や妊娠期、出産時、から小児期までの健康状況への理解に大きく貢献し、将来の日本におけるワクチン接種プログラム作成に重要な知見を提供いたします。

この共同研究では、日本におけるCMVおよびEBVの抗体保有率を調査します。抗体保有率とは、ある集団における特定の病原体に対する抗体を持っている人の割合で、血液検査でわかります。これまでのところ、日本人におけるCMVとEBVの抗体保有率のデータは特定の集団や特殊な集団に限られており、一般に広く適用することが困難です。日本における生活、衛生環境の変化によってCMVおよびEBVに感染する時期が遅れているか調査を行います。CMVでは感染が幼少期から妊娠・出産時期に移行していくと、胎児に先天性異常をきたす可能性があるため、CMVと妊娠期から小児期までの健康状況の関連も調査します。これらの研究を通じて潜在性ウイルスに関する理解を深めることは、これらのウイルスとさまざまな疾患との関連、より広範な公衆衛生への貢献、疾病の健康への影響を評価するうえで重要です。

この共同研究では、東日本大震災を契機に2013年から開始され、現在も継続しているToMMoの集団ベースの前向きコホート研究の一環として収集された保存検体を活用します。ToMMoは、日本で初めて設立された大規模な一般住民集団ベースのバイオバンクであり、国民の健康と福祉の支援、および個別化ヘルスケアの実現を目的としています。

【用語解説】

*潜在性ウイルスについて
感染後に活発なウイルス複製を起こさずに、感染状態を維持しているウイルスのことを指します。特定の条件、例えば免疫力が低下したときに活発なウイルス複製を起こし、そのウイルス独自の感染症症状を呈します。

**サイトメガロウイルス(CMV)について
CMVは潜在性ウイルスで、初回感染時はその症状から風邪と区別がつかない症状を呈し、多くの人が人生の中で一度は感染しているといわれています。妊婦がCMVに感染すると母子感染し、CMVが胎児に合併症を引き起こす可能性があります。先天性CMVは、約200人に1人の赤ちゃんが感染すると推定されて、ダウン症、胎児性アルコール症候群、二分脊椎症よりもその数は多いと言われています。CMVに感染して生まれた赤ちゃんの5人に1人は、視力障害、難聴、筋力や協調性の低下など、場合によっては生命を左右する深刻な健康上の問題を抱えることがあります。

***エプスタインバーウイルス(EBV)について
CMVと同様に、EBVも一般的な潜在性ウイルスです。EBVは体液(唾液など)を介して感染し、通常、幼児期または青年期に感染します。幼児期のEBV感染は風邪様症状を呈し、青年期に初回感染すると、発熱、疲労、咽頭痛、リンパ節腫脹などを伴う伝染性単核球症(IM)を発症することがあります。IMは4~6週間にわたり症状が続き患者を衰弱させ、時には肝障害、脾臓破裂、気道閉塞などの合併症を引き起こし、入院を必要とすることもあります。EBVは潜在性ウイルスであるため、感染後も生涯体内に留まり、生涯にわたって病状を引き起こす可能性があります。EBVは、多発性硬化症の発症リスク、関連するリンパ増殖性疾患、がん、自己免疫疾患の発症リスクを上げるとの報告もあります。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
広報戦略室
TEL:022-717-7908
E-mail:tommo-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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