平成20年1月 東北大学総長 年頭挨拶
皆さん、明けましておめでとうございます。
新たな年にあたりまして、東北大学の皆さんにご挨拶申し上げます。
"2008年"― 東北大学は新たな100年の歴史の創造に向けて確かな一歩を踏み出します。と同時に、大学を取り巻く変化とスピードがますます加速する時代の幕開けの年になるものと思われます。
このような大きな変化の時代の中で、社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている私たちは、絶えず新たな研究・教育を創造し、自ら変化・進歩し続ける必要があります。
そのためには、その時々の環境に対峙して、従来の考え方、常識、仕組みなどにとらわれることなく、変化に対応するシナリオを準備することが求められます。また、戸惑うほどの変化の激しい時代には、私たちは往々にして目先の姿しか見えなくなりがちですが、こうした時代だからこそ、変化を先取りしたビジョンをどう描くかが重要になってまいります。
ここで、発表してから1年が経とうとしている「井上プラン2007」(東北大学アクションプラン)について申し上げたいと思います。
井上プラン2007は、かねてから申し上げておりますように、人類社会の発展への貢献という揺るぎない姿勢をもって、教育、研究、社会貢献、キャンパス環境、組織・経営という5つの柱ごとに「世界リーディング・ユニバーシティ」を目指した戦略実行プランを打ち出したものであり、その着実な実行が求められます。
その観点から本学の取り組みをみてみると、この間、着実に進捗しているプランが数多くあり、皆で懸命にチャレンジしてきた結果として、心から感謝しております。一例を挙げると、教育面においては、教養教育を更に充実させるための施策として、海外インターンシップ制度の積極的導入も含めて、東北大学独自の新たな教養教育カリキュラムの構築とそのための実施体制の整備を進めています。
研究面においては、卓越した知識と創造的総合知を備えた、21世紀の学術をリードする研究者を育成する「国際高等研究教育機構」を創設しました。また、世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムに提案した国際高等原子分子材料研究拠点構想が採択され、「原子分子材料科学高等研究機構」を発足させました。
さらに、産学連携事業等を通じた新実業の創出の先導、世界に開かれた国際水準キャンパスの整備、国際競争力を支える「東北大学式人事システム」の構築、東北大学基金(仮称)の創設など、オリジナリティに溢れた取り組みを進めてきています。このような取り組みは、本学ならではのことと誇りを感じており、本学の教職員、学生、そして同窓生が一体となってその力を発揮していることの表れと自負しております。
一方、残念ながら、現在までのところまだ十分な進捗とは言い難いプランもあります。そうしたプランにおいては、新たな創造に対するチャレンジが不十分ではないかとも考えられます。本年は今まで以上に積極的に立ち向かうことで、新たな創造がなされるものと期待しております。
「世界リーディング・ユニバーシティ」になるという目標に到達するための道程は、大学を取り巻く環境が絶えず激しく変化する中で、常に問い直していかなければなりません。井上プラン2007を着実に実行していくには、昨年とりまとめたプランの内容をそのまま踏襲するにとどまらず、現状への反省と環境の変化に応じた見直しを不断に実施し、テーマアップしていきながら実行していくことも重要です。そのため、これからの進むべき道程を環境に適合したものに改定し、井上プラン2008として進化させていきます。また、第一期中期目標・中期計画を完遂し、中期目標期間評価に対処していくとともに、井上プランを基軸とした飛躍的な発展を目指す第二期中期目標・中期計画の構築を進めていきます。そしてこれらの実現に向けた具体化の過程では、学内外の意見をいただくことを期待いたします。
私たち東北大学は、教職員、学生、同窓生はもとより、地域社会、国際社会など多くの皆様との関わりの中で活動を行っております。
今後世界リーディング・ユニバーシティとして成長していくためには、これまで述べてまいりました変化への対応と合わせ、本学と関わる皆様からの信頼、尊敬、そして愛情を勝ち得ていかなければなりません。
社会からの信頼、尊敬、そして愛情を受けられることが大学の存立基盤であるということを心にしっかり刻み込み、これからまた1年、健康で充実感をもって日々業務にチャレンジしていこうではありませんか。
最後になりましたが、皆さんとご家族のご健勝を祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。
平成20年1月4日 東北大学総長 井上 明久