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大野英男

平成31年度東北大学入学式祝辞

【はじめに】

東北大学に入学された皆さん、誠におめでとうございます。本日ここに、学部生2,502名、大学院生2,490名、合計4,992名の学生諸君を迎えることができたことは、私たちの大きな喜びとするところです。東北大学を代表して、皆さんの入学を心より歓迎いたします。また、皆さんの勉学を、今日まで、献身的な愛情をもって励まし続けてこられたご家族や関係者の皆様に対し、心より祝意を表します。

【東北大学の歴史と三つの理念】

皆さんが東北大学の一員となった最初の日に、まず、東北大学とはどのような大学であるかをお話ししましょう。
 東北大学は、日本で三番目の帝国大学として明治40年、1907年に建学されました。今から112年前のことです。また、一昨年6月には、東京大学、京都大学とともに、最初の指定国立大学法人として認定されました。現在、「杜の都」と呼ばれる仙台に、四季の気配を色濃く映す四つのキャンパスを構え、10の学部と15の大学院研究科、3の専門職大学院、6の附置研究所に加え、教育研究に携わる機構・センターと図書館・病院などがあります。
 本学には三つの理念があります。「研究第一主義」、「門戸開放」、「実学尊重」です。これらについて触れておきたいと思います。

【「研究第一主義」と「実学尊重」について】

はじめに「研究第一主義」についてお話しします。

世界トップレベルの研究を進める総合大学にとって、基礎資料や文献などの学術資源の集積は極めて重要です。初代総長の澤柳政太郎先生が、本学の文系学問の礎とするために整備した著名な文献コレクションとして、「狩野文庫」があります。これは、澤柳総長と親交が深い教育者であり、またわが国きってのエンサイクロペディストでもあった狩野亨吉による10万8千冊に及ぶ蔵書コレクションです。国宝二点を含む卓越した和漢古典の研究資料として知られ、「古典の百科全書」あるいは「江戸学の宝庫」とも称されています。
 もう一つ例を挙げましょう。夏目漱石の名前を知らない方はおられないと思いますが、漱石の蔵書に加え、日記、ノート、試験問題、原稿等の自筆資料を含む「漱石文庫」も本学附属図書館に納められています。漱石の門下生で、本学の第五代図書館長でもあった小宮豊隆先生のご尽力によるものです。なお、漱石が晩年に暮らした早稲田南町の漱石山房が空襲で焼けてしまったことから、本学は漱石研究において重要な役割を果たしていることになります。皆さんも展示などで見る機会も多いと思います。ぜひ総合大学の学問の香りを感じてほしいと思います。
 次に、イノベーションに資する研究の歴史に目を転じましょう。21世紀は「データの世紀」であると言われますが、世界中で蓄積される膨大なデータのほとんどすべてが、実は、東北大学関係者が生み出した二つの技術によって保存されています。まず、今日のハードディスクドライブは、すべて垂直磁気記録方式を採用していますが、これは本学名誉教授の岩崎俊一先生が発明したものです。また、スマートフォンを含めて多くの電子機器で使われているフラッシュメモリもやはり本学名誉教授の舛岡富士雄先生が企業在籍中に発明しました。その高度化に関する研究も本学で行われています。これらの成果は「研究第一主義」の伝統のもとに行われた卓越した基礎研究が、もう一つの理念である「実学尊重」の精神を介して実を結んだものと言えます。第6代総長の本多光太郎先生は「産業は学問の道場である」と言われました。産業、すなわち社会に学問は鍛えられ、社会を変革する成果を生み、それによって学問自身もさらに深化していくのです。

【多様な学生への「門戸開放」について】

最後に「門戸開放」の理念についてお話しします。本学が創立された1907年当時、大学への入学は旧制高等学校の出身者のみに許可されていました。これに対して本学は、当初から、専門学校、高等師範学校の卒業生にも門戸を開き、1913年には日本ではじめて3名の女子の入学を許可しました。現在の理学部化学科および数学科へ入学した黒田チカ、丹下ウメ、牧田らくの三氏です。
 また、中国の代表的文学者であり思想家でもある魯迅は、1904年に本学医学部の前身であった仙台医学専門学校に留学しています。その頃の指導教官である、解剖学の藤野厳九郎教授の丁寧な指導が「藤野先生」という作品で綴られています。
 このように本学は実力ある者はそのバックグラウンドに関わらず広く受け入れて、多くの才能ある人材を輩出してきました。皆さんは、今述べた大先輩たちとは、生きる時代も環境も違います。しかし、私たちは一世紀の時を経ても変わらずに、「研究第一主義」、「門戸開放」、「実学尊重」という理念を掲げ、時代を切り拓く仲間でもあるのです。

【予測できない未来を切り拓く】

さて、それでは皆さんの時代、「令和」の時代にはどのような未来が待ち受けているのでしょうか。本学は、昨年の11月に「東北大学ビジョン2030」を公表しました。これは、2030年に本学があるべき姿とそこに至る道筋をまとめたものです。副題を「最先端の創造、大変革への挑戦」としました。まさに、世界は今、大きな変革期を迎えています。
 例えば、急速に開発が進み社会に浸透しつつある人工知能AIにより、車の自動運転や医療における画像診断はもちろんのこと、作曲やデザインまでもが可能になりつつあります。今後、自動運転車が事故を起こした場合に誰が責任をとるべきか、AIが生み出した作品の著作権はどうなるのかなど、法制度や倫理に関する考え方の再構築も必要です。このように、新たなテクノロジーは、私たちの社会のあり方そのものを大きく変化させつつあります。理系や文系などの専門を超えた広い視野をもって、皆さん自身が新たな社会のあり方を考え、夢のある豊かな未来を切り拓いていく、そのような変革の時代を迎えているのです。

【学生時代に挑戦すること】

これから皆さんにとって重要になるのは、確固とした基礎学力とともに、新たなことに挑戦して物事を動かしていく行動力です。本学では、皆さんの挑戦する心を受けとめ伸ばすために、今年度から「挑創カレッジ」 ~ 挑戦し創造するカレッジ ~ を開講することにしました。変革の時代に求められる、グローバルなマインドセット、AI・データのスキル、そして、アントレプレナーシップの三要素を実践的に身に付けることを目的としています。ここで、アントレプレナーシップとは、既存の枠に囚われずに新たなことに挑戦する姿勢・資質という広い意味で使っています。
 これから、皆さんが、やってみたいと思うこと、例えば留学するとか、興味を持った専門を究めるとか、スポーツに熱中するとか、仲間とイベントを企画するとか、さまざまなことに挑戦し、構想力と行動力を磨いてください。これらが予測できない未来を切り拓く原動力になります。東北大学は、皆さんのチャレンジを後押しするさまざまな仕組みや環境を用意しています。総長としての私の最も重要な仕事は、「学生諸君の挑む心を受けとめ、伸ばすこと」であると思っています。

【東日本大震災の経験から、持続可能な社会の創造へ】

東北大学は、民間や地方自治体からの支援を受けて創立されて以来、一貫して社会とともにある大学でした。私たちがこのことを改めて胸に刻んだ出来事、8年前の東日本大震災についてお話しします。大震災では本学も大きな被害を受けました。その当時、自分たちの復旧活動と並行して、教職員・学生が一丸となって地域の復興を後押しする百以上の自発的な取り組みがわき起こり、「東北大学復興アクション」と呼ばれました。その1年後、私たちは災害科学国際研究所を創設し、大震災の教訓をもとに世界の防災減災の推進に貢献してきました。
 2015年3月に仙台で開催された第三回国連防災世界会議では、「仙台防災枠組み」が採択され、7つの防災達成目標に向けて各国が取り組むことが合意されました。同じ年の9月には国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、さらに、12月には気候変動抑制に関する「パリ協定」が合意されました。本学が、「社会にインパクトある研究」と呼ぶ、持続可能な社会の創造に向けた取組を立ち上げたのも、まさに同じ年なのです。
 このように大震災を経験した東北大学は、サステナブルな世界の実現に向けて先進的に行動する世界有数の大学として発展しています。皆さんは、そのようなアイデンティティを共有するコミュニティの一員となったことを心にとめてください。

【留学生に】

さて、本日の入学式には、多くの海外からの新入生が出席しています。東北大学は、建学当初から世界に開かれたグローバルな大学であり、日本各地はもとより、世界の100カ国近くの国・地域から訪れた留学生が学んでいます。ここで、海外からの皆さんのために英語でお話しいたします。

I would like to take this opportunity to address our new international students.

It is my honor to greet you to Tohoku University today and I am convinced that the coming years will be the most fruitful of your life.

Our university was founded in 1907 as the third national university of Japan. During the years, our members have made major contributions to society through crucial scientific achievements and important innovations.
Just as an example, the hard-disk drive and flash memory, the essential technology to store the ever-increasing amount of data currently used on a daily basis, have been made by affiliates of Tohoku University. Which means, the activities here at our university were necessary to support the current digital era at a very fundamental level.

We are and have always been a research centered, practice-oriented community.
Our doors are opened to everyone with the passion and enthusiasm to challenge themselves, and who wish to acquire new skills and broaden their horizon.

At Tohoku University you will have the opportunity not only to obtain advanced knowledge of the subject you chose, but also to study and interact with the world to gain deeper insight and a more fundamental understanding of your surroundings.

It is my honest wish for you to pursue your interests, whether it will be specialized studies, exchange with other cultures or social engagement with friends. We are here to help you push your boundaries and experience the world in a way that will be beneficial to all of us.

There might be times when you will struggle or doubt yourself, but I am convinced that you will overcome the difficulties and emerge as a more sophisticated version of yourself with a new, global perspective.
And we are all here as family to help in case you need guidance.
Welcome to Tohoku University.

【萩友会および東北大学基金について】

最後に、東北大学では、学生や保護者の皆様と同窓生・教職員をはじめとする東北大学コミュニティをつなぐ全学校友会として萩友会を設立しています。また、学生の皆さんの充実した教育研究活動を支援するために東北大学基金があります。東北大学基金では、皆さんの入学を記念した企画も用意していますので、配布資料をご覧いただき、ご協力いただければ幸いです。

【結びの挨拶】

皆さんが、自らの挑戦する心をかき立て、本学で自らの能力を伸ばし、世界に向けて大きく飛躍することを期待して、私のお祝いの言葉といたします。

2019年(平成31年)年4月4日


東北大学総長

大野 英男


里見進前総長メッセージはこちらよりご覧ください。

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