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令和2年3月東北大学学位記授与式告辞

【はじめに】
 このたび、晴れて学士の学位を授与された2,398名の皆さん、修士の学位を授与された1,740名の皆さん、専門職の学位を授与された56名の皆さん、そして博士の学位を授与された433名の皆さん、おめでとうございます。東北大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。
 また、この間、皆さんが晴れて本日を迎えることを心待ちにし、支援をしてくださったご両親、ご家族、関係者の皆様に、心よりお慶びを申し上げます。

さて、本日は新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)の世界的な拡大を受け、出席者を限った学位記授与式を実施しています。感染症がわが国も含めて世界各地に広がりつつある中、卒業生・修了生をはじめご関係の皆さまの安全安心を考えて決断しました。どうかご理解をお願いいたします。

人類は古くから、感染症と闘ってきました。進化生物学者でもあるジャレド・ダイアモンドは、その著書「銃・病原菌・鉄」の中で、一万三千年にわたる歴史の謎を解き明かす鍵の一つとして、感染症を取り上げています。今日、かつてないほどのスピードをもって新型コロナウイルス感染症が広がっています。国連世界観光機関によると2019年に世界の国境を往来する国際旅客数は15億人に達しており、世界が情報だけでなく物理的にもリアルタイムで繋がった一つの有機体となっていることがわかります。
 また、感染拡大の防止策を見て、「社会の統制」と「個人の自由」の間のトレードオフを意識した方も多いのではないでしょうか。感染を防ぐために社会がとるべき措置と市民がとるべき行動の間には多様な選択肢が存在します。それらに対して、各国の医療制度はもちろんのこと、政治、経済、文化、環境、さらには地政学的な位置づけなど多様な背景要因が影響を与えています。

一方で、グローバルな世界であるからこそ、ウイルスの性質や感染症の病態などが国境を越えて共有され、世界でワクチンを含む治療法の研究開発が急ピッチで進んでいます。今後、国際社会が直面する危機に対して、国際協調を通して解決していくことが不可欠になりますし、その基盤となる情報公開に基づく信頼関係の構築も重要です。さらに、未知の脅威への対応は、自然科学から人文社会科学にわたる広範な知の基盤があって初めて可能になることも忘れてはなりません。

皆さんが船出する世界は、そのような多様で個性に富み、ダイナミックに発展する世界なのです。答えのない課題に対していかなる解決を見出すか、誰も見たことのない新しい価値をどのようにして生み出すか、さらには、よりよい未来への社会変革をいかにして先導していくか、皆さんがこれから進むべき道を思い描いてください。東北大学で学んだ科学的方法論と未知への挑戦心こそが、皆さんにとっての羅針盤となるはずです。

【東北大学の歴史】
 東北大学は、今から113年前の1907年の建学以来、「杜の都」あるいは「学都」と呼ばれる仙台の地にあって、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念のもとに、多くの指導的人材を輩出し、イノベーションを駆動する世界的研究成果を挙げてきました。
 9年前の2011年に発生した東日本大震災においても、全学を挙げて被災地の復興を後押しし、その教訓をもとに世界の防災減災の推進に貢献してきました。
 このように、皆さんが巣立つ東北大学は、持続可能な世界に向けたグローバルイッシューに取り組んで先進的に行動する世界有数の大学であり、2017年には、世界の有力大学と伍していくことを使命とする「指定国立大学法人」の最初の三校に選ばれました。これも、長年にわたる様々な取組とその成果に裏打ちされてこそ、実現したものです。

皆さんは、今日からその系譜に名を連ねることになります。これまで本学において、日々、研鑽を積んで来られた皆さんは、変わり続ける世界に出て、その変化をリードする準備ができています。また、社会では、皆さんの活躍を心待ちにしています。皆さんが、新たな未来を創り出す、まさにその担い手なのだということをこの機会にぜひ胸に刻んでください。

【萩友会、世界ネットワーク】
 これから皆さんは、様々な人たちと連携して、新たな社会を創っていくことになります。そのとき、本学のコミュニティの一員であることが、皆さんにとって大きな力となるでしょう。本学には、全学同窓会である「東北大学萩友会」のもとに、国内外に多くの同窓会があります。本学のネットワークも大いに使って、世界をより良い場所にしていき、皆さん自身も豊かな時間を過ごしてください。
 そして、そこでまた、皆さんとお会いできる日を、心から楽しみにしております。

ここで、日本語を母国語としない卒業生、修了生のために、英語でお祝いの言葉を述べます。

I would also like to take this opportunity to address our non-Japanese speaking graduates and our international students who are watching the live broadcast from home.

Due to the novel coronavirus we decided to hold this closed-door event to congratulate all our graduates with only a few student representatives to assure the safety of you and other participating members.

The active exchange of the globalized community has certainly played a serious role regarding the outspread pandemic, but international collaborations also provide means to communicate new information and necessary knowledge to fight this virus. Humanity has been battling illnesses since its very beginning and I am convinced that we will manage this crisis as well.

When you step into this ever-changing world, you will always encounter new, unknown problems. And you might face situations where illogical opinions might become rampant. However, I am sure that you have gained the wisdom for a more fundamental understanding of your surroundings during your time here at Tohoku University and that you acquired necessary skills to form a sound judgement and reasonable solutions.

I would like to encourage you to continue your engagement as valued member of Tohoku University, since there are never enough voices of reason.

We have a global alumni network managed by our alumni association 'Shuyukai', where you can keep in touch with Tohoku University and - most importantly - help each other as friends and family. You are always welcome and we are all here as family to help communities all over the world.

Congratulations on your graduation and all the best for your future.

あらためて、本日は誠におめでとうございます。
 皆さんが今後、世界に向けて大きく飛躍することを心から期待して、私の式辞といたします。

2020年(令和2年)年3月25日


東北大学総長

大野 英男

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