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令和6年4月年入学式

東北大学に入学・進学された皆さん、おめでとうございます。本日ここに、学部生2540名、大学院生2503名の皆さんをこの東北大学に迎えることができたことは、私たちの大きな喜びです。東北大学を代表して、皆さんの入学・進学を心から歓迎したいと思います。

また、この間、皆さんが晴れて入学・進学する日を心待ちにし、これまで皆さんの勉学や生活をさまざまな形で支え、励ましてこられたご両親、ご家族、そして関係者の皆様に、心よりお喜びを申し上げます。

コロナ禍をのり越え、新入生・大学院進学者の皆さんとその保護者の方が一堂に会する形でこの入学式を開催し、皆さんを東北大学の一員として晴れてお迎えできますこと、本当に嬉しく思っております。なお、本日のこの入学式の模様は、皆さんの入学・進学をお祝いする関係の方々に、全国からまた世界中からご覧いただけるように、本学のホームページで配信しております。

東北大学の現在とその社会的評価

さて、皆さんが今日からその一員となった東北大学とは、どのような大学でしょうか。東北大学は、今から117年前の1907年に、この「杜の都」仙台の地に、東京と京都に次ぐ第三の国立総合大学として創設されました。それ以来、本学は「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念の下で、世界をリードする研究成果をあげると同時に、多くの指導的人材を世界に輩出してきました。

現在では、10の学部と15の大学院研究科、3つの専門職大学院、6つの附置研究所と病院、附属図書館をはじめ、教育研究に携わる多くの機構やセンターを有する、日本を代表する総合研究大学として発展しています。

それでは、東北大学は社会からどのように評価されているでしょうか。例えば、THE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)世界大学ランキング日本版で、東北大学は2020年から2023年まで4年連続して第1位という評価を得ています。「教育」に関して各項目で高い評価を得ると同時に、「国際性」に関しても高く評価され、バランスよく総合的に日本でナンバーワンの大学と評価されたわけです。もちろん、現在さまざまな大学ランキングが存在し、またランキングだけが大学の真の価値を決めるものではありません。しかし東北大学は、他の大学ランキング、例えば「入学後に学生が伸びる大学」に関する高校の先生方による評価でも、長年にわたり第1位を獲得し、「新型コロナウイルスへの優れた対応」に関する大学学長による評価でも第1位となりました。また、文部科学省は、2017年に国立大学法人の中から世界の主要大学に伍してこれと競争する日本の大学を「指定国立大学法人」と認定する制度を開始しましたが、東北大学はその最初の3大学の1つに指定されました。このように、東北大学は、教育と研究という大学の2つの重要な機能に関しても、さらに大学の国際化や感染症対策といった現代の社会課題への対応に関しても、さまざまな面で社会から高い評価を得ています。このような本学に対する高い評価と深い信頼は、一朝一夕に築かれたものではありません。すべての学生と教職員が、長い年月をかけて各自がそれぞれ地道な努力を積み重ねてきた成果が、今日のこのような社会からの深い信頼と高い評価を生み出したのです。

皆さんもご存知の通り、東北大学は昨年の9月に「国際卓越研究大学」の唯一の候補校として認定され、現在その最終認定に向けた審査が進められています。「国際卓越研究大学」とは、日本を先導する世界最高水準の研究大学を支援する目的で、日本政府がスタートした全く新しいプログラムです。このプログラムは日本の研究大学の枠組を大きく変革し、国際的な舞台で世界の有力大学に伍して、人類社会全体の発展に貢献する、卓越した大学の創設を目指すものです。今回、日本国内の他の有力大学も申請を行った審査の中で、東北大学だけが唯一の最終候補校として認定されました。これは我々の大学が日本の研究大学のトップを走り、世界を代表する研究大学と切磋琢磨しながら大学改革を先導し、世界的な舞台で大きく飛躍すべき立場に立ったことを意味します。私は、東北大学がこの栄誉ある役割と大きな責務を引き受け、社会の付託に応えて日本を牽引する研究大学として、さらに発展する強い決意を持つことを改めて表明するとともに、その最終認定の獲得に向けて全力を尽くす覚悟です。

東北大学の歴史とアイデンティティーを知る

先ほど、私は大学ランキングだけが大学の真の価値を決めるものではない、と述べました。それでは、大学の真の価値とは、何を基準として、どのように決められるものでしょうか。この点に関してはいろいろな考え方があると思いますが、大学の構成員が自らの大学の歴史を知り、確固としたアイデンティティーを持ち、その構成員であることに誇りを持って、未来に向けた教育や研究に励む原動力にしている、そのような大学こそが真の意味で誇るべき大学といえます。

本日は、このような観点から、特に東北大学の「門戸開放」の歴史と「研究第一」の理念、そしてその未来に向けた意義について、新入生・大学院進学者の皆さんにお話したいと思います。「過去」を十分に理解することは、「現在」から「未来」に向けた発展を考える上での貴重な羅針盤になるからです。

まず「門戸開放」の歴史に関して、東北大学は1913年に当時の国立大学として初めて、3名の女子学生の入学を認めました。3名の最初の女子学生の1人で化学を専攻した黒田チカは、その後日本を代表する女性科学者の1人として、長く学界の第一線で活躍しました。また、本学は設立当初から、当時の他の国立大学とは異なり、旧制高校以外の高等工業学校や高等師範学校などの卒業生にもその門戸を開いてきました。さらに、中国の文豪である魯迅がかつて本学医学部の前身である仙台医学専門学校に留学生として学んでいたことは広く知られていますが、国籍にとらわれず海外から多くの優秀な留学生をいち早く受け入れてきました。性別や出身校、国籍等にとらわれず、幅広く優秀な人材を世界から受け入れる本学の「門戸開放」の理念は、今日の言葉でいえば「ダイバーシティ」を意味するものです。本学は、創設当初からこのような現代的意味での「ダイバーシティ」を建学の理念として一世紀以上にわたり実践してきたのです。さらに本学は、このような「門戸開放」の理念に基づく「ダイバーシティ」(多様性)をさらに発展させ、現在では「エクイティ」(公正性)や「インクルージョン」(包摂性)といった現代的課題にも積極的に取り組んでいます。女子大学生誕生から110年となり、本学は「東北大学DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進宣言」を採択して、未来へ向けた取組みを宣言したところです。今後もこのような人材の多様性こそ、未来を切り開く大きな力になると考えています。

「研究第一」の理念に関しては、設立当時、東北大学は世界から広く優秀な人材を教員として集めようとしました。例えば、本学の初代総長である澤柳政太郎は、新設の東北帝国大学理科大学教授として、当時新進気鋭の理論物理学者であったアルベルト・アインシュタインを破格の待遇で招聘することを提案しました。この構想は残念ながら実現しませんでしたが、アインシュタインはノーベル物理学賞を受賞した直後の1922年に来日した際に、この仙台まで足を運んで東北大学を訪問し、愛知敬一や本多光太郎など当時の本学を代表する教授たちと面談しています。

澤柳総長をはじめとする本学草創期の総長はいずれも、大学教授の必須の条件は世界一流の研究者であることと考えていました。本学草創期の教授たちは着任前に留学を義務づけられ、世界的な研究者のもとで第一流の研究に没頭し、研鑽を積みました。このような本学創設当時の理念を「研究第一」主義という用語に収斂させたのが、世界的研究者であり当時世界最強の磁石「KS鋼」を生み出した、本学第6代総長の本多光太郎でした。世界第一流の研究こそが東北大学の最も重要なミッションであるという理念は、その後も本学の中でしっかりと受け継がれ、今日まで本学の最も重要な伝統として息づいてきたのです。

ここでの「研究第一」主義とは、もちろん教育を軽視して研究にのみ没頭することを意味するものでは全くありません。世界第一流の研究こそが世界第一流の教育を可能にする、ということを意味しているのです。今回、東北大学が「国際卓越研究大学」の唯一の最終候補校として選ばれたことは、創設以来の「研究第一」の理念が本学のアイデンティティーとして受け継がれてきたことの成果であるともいえます。

東北大学コミュニティの一員として

もちろん、大学や大学院での生活は、勉強や研究がすべてではありません。我々の大学では、学友会の体育部や文化部などの活動も非常に活発で、素晴らしい成果を上げています。全国の国立七大学が持ち回りで開催する「全国七大学総合体育大会」、いわゆる「七大戦」では、本学の学友会体育部の各部が目覚ましい活躍をしており、2013年から2019年まで、2度の三連覇を果たし、コロナ禍の影響での2年間の中止をはさんで2022年にも総合優勝を果たしました。また、学友会人力飛行部「東北大学Windnauts」が滋賀県琵琶湖で行われる「鳥人間コンテスト」で昨年優勝し、学友会準加盟団体「ストリートダンスサークルWHO」も昨年ストリートダンスで大学日本一に輝くなど、本学の学生はさまざまな分野で輝かしい成果をあげています。

新入生や新たに東北大学の大学院に進学した皆さんも、是非これらの活動に積極的に参加し、充実した学生生活を送っていただければと願っています。

また、東北大学では、学生やその保護者、卒業生・修了生、教職員などを繋ぐコミュニティとして全学組織の「萩友会」があり、日本全国や海外の国や地域にも支部が設けられて活発な活動を展開しています。また、学生の皆さんの教育研究活動をさまざまな形で支援するための「東北大学基金」も設けられています。これらは、本学を卒業・修了した卒業生・修了生や本学を支援する多くの方々、いわば「東北大学コミュニティ」の皆様からの多くのご支援やご寄附で成り立っています。皆さんは、本学に入学・進学した今日から、この「東北大学コミュニティ」の一員です。これから東北大学基金や萩友会からの支援を受ける機会があるかもしれませんが、その際には本学をご支援していただいている「東北大学コミュニティ」の卒業生・修了生や関係の方々への感謝の思いを忘れずにいてください。そして、将来いつの日か、今度は皆さんが母校の後輩となる学生たちを支援し励ましていただければと願っています。

留学生へのメッセージ

さて、今年も、海外から多くの留学生が東北大学に入学・進学しました。東北大学は、設立当初から世界に開かれたグローバルな大学であり、東北大学の学部と大学院では、日本全国はもとより、世界の多くの国や地域からの留学生が学んでいます。ここで、海外から東北大学に入学・進学した日本語を母語としない留学生のために、英語でお祝いの言葉を述べたいと思います。

Now, I would like to take this opportunity to address our non-Japanese speaking students who have become new members of Tohoku University. Welcome to Sendai, and welcome to our community.

Tohoku University was founded in 1907 here in Sendai as the third comprehensive national university in Japan. Since its foundation, Tohoku University has been known for its three principles, "Open Doors", "Research First" and "Practice-oriented Research and Education". We were Japan's first national university to accept female students in 1913, and for a long time, we have accepted many talented young people regardless of their gender, nationality or belief. We are proud to be a university of academic excellence that has been progressive, inclusive and strongly engaged in diversity for more than a century.

Last September, the Japanese government selected Tohoku University as the only final candidate in the "Universities for International Research Excellence" Program. This means that we have been recognized as a top research university in Japan and on the world stage. As President of Tohoku University, I will work hard by collaborating with all faculties and staff to achieve final selection.

Congratulations on your entrance to Tohoku University.  Welcome to our community.  Please enjoy your time here with your new family.

結びの言葉

東北大学は、日本と世界の未来を担う皆さんの入学・進学を心から歓迎いたします。東北大学でのこれからの日々が、実り豊かなものとなること、そして皆さんが一層大きく成長されることを心から期待して、私のお祝いの言葉といたします。

令和6年4月3日


東北大学総長

冨永悌二


大野英男第22代総長メッセージ

里見進第21代総長メッセージ

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