2014年5月30日 第104回サイエンスカフェ
黒鉱鉱床と、現在の海底でできつつある黒鉱もどきの話
講師:山田 亮一 理学研究科、地学専攻研究員・自然史標本館 教育研究支援者
プロフィール
他の先生方とは少々異なった経歴です。鉱山会社に35年以上勤務し、国内、国外の資源開発に従事してきました。定年を機に東北大学の博士課程に入り直し、博士の学位を取得した後、大学に残り、現役時代の経験を生かして、主に学生のフィールドワークの支援を行っています。専門は、資源地質ですが、現在は、理学研究科の研究員として、日本列島の島弧発達過程の研究を続けています。
開催情報
開催日:2014年5月30日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
最近、沖縄や小笠原の海底で、金銀や銅鉛亜鉛など有用元素を沢山含んだ堆積物が発見され、大きな話題になっています。 東北地方の黒鉱鉱床と比較しつつ、その「海底熱水鉱床(黒鉱もどき)」の素顔を紹介します。
Q&A
1.日本以外に存在する黒鉱の発生する場所はあるのか(発掘可能な深さで)
黒鉱と同じ仲間の鉱床を正式には「塊状硫化物鉱床」と言います。塊状硫化物鉱床は世界中のあらゆる場所で、様々な時代の地層から知られており、量的にも、質的にも黒鉱を凌ぐものがあり、現在でも多くの鉱山で採掘されています。その理由は、長い地球の歴史の中で、黒鉱ができた当時の日本と同じ地質環境(バックアーク、背弧海盆)が出現したものと考えられています。その中で、日本の黒鉱が、特に有名な理由は、地質的な時代感覚では、黒鉱は形成されてから、まだ日が浅く、殆ど変形作用を受けていないため、できた当時の状況が詳細に観察できるため、非常に詳しく研究されているために、世界中の「塊状硫化物鉱床」の標準になっているからです。
2.熱水形成の熱源は流鉱岩マグマとのことでしたが(資料P6)流鉱岩質でないマグマという可能性はあるのでしょうか?
またその場合、黒鉱鉱床形成に何らかの影響をもたらすのでしょうか?
上の1.で述べた「塊状硫化物鉱床」を、さらに詳しく分類すると、4つのタイプに区分されます。別子型、キプロス型、イベリア型および黒鉱型ですが、それらは、黒鉱と違って熱源となるマグマやできた地質環境が異なっています。たとえば、最初の2つは、海底や海底火山に活動した玄武岩を熱源としています。熱源や地質環境の違いは、主にどの様な元素が農集するかという点に相違があり、別子型やキプロス型では、殆ど銅ばかりの鉱石から成り立っています。
3.海底の熱水噴出孔周辺に生息する特殊な生物(ゴエモンコシオリエビ)などの対策はどうなのか聞きたいです
私も、その点に関しては、あまり詳しい訳ではありません。聞くところによれば、固有の生物群集の保全に関しては厳しい制約が付けらており、熱水鉱床の開発には、深海底固有の環境保全が絶対条件と言われています。
4.バックアークのところがよくわからなかった
プレートが潜り込んでいる場所の裏側。即ち、潜り込んで行ったプレートが、地球の内部(マントルといいます)で、消化される訳ですが、その時おこる物質の変化が原因と考えられています。地球の内部で重い物質と軽い物質に分解され、重い物質は地球の中心部(マントルとコアの境界)に向かって、さらに潜り込んで行き、残された軽い物質が、浮力を得て上昇するものと考えられています。軽い物質が上昇する場所は、元の大陸の縁の部分ですので、元の大陸が裂け、(最終的に)海底に顔を出して、激しい火山噴火が発生します。この様に、裂けた縁の部分と元の大陸との間をバックアークといい。そこで起こる火山活動をバックアーク火山活動(日本語では、背弧海盆火山活動)といいます。
当日の様子
関連リンク
- 理学研究科 地学(資源)および環境科学研究科 土屋研究室を兼務