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難治性疾患「ATR-X症候群」の治療に新たな光

東北大学大学院薬学研究科の福永 浩司(ふくなが こうじ)教授、岐阜薬科大学の塩田 倫史(しおだ のりふみ)准教授、京都大学大学院医学研究科の和田 敬仁(わだ たかひと)准教授らの研究グループは、重度知的障がいをきたす指定難病のひとつである「ATR-X症候群」の治療薬候補を世界で初めて発見しました。

ATR-X症候群は男性で発症し、知的障がい・運動発達の遅れを特徴とした難病です。発症頻度は出生男児5~7万人に1例、日本国内では年間10名前後の患者が発症していると推定されています。ATR-X症候群では、ATRXタンパク質が上手く機能しないため、色々な遺伝子が正常に働かなくなり、様々な症状を呈すると考えられています。

本研究グループは、ATR-X症候群でみられる知的障がいに有効な治療薬の探索を行いました。その結果、既に市場で安全性に関する情報が整備されている既存薬である「5-アミノレブリン酸」が今まで知られていない薬理作用によりATR-X症候群モデルマウスの知的障がいに有効であることを発見しました(概要図)。

私たちの遺伝情報(ヒトゲノム)を司るDNAには、繰り返し配列により「グアニン四重鎖」と呼ばれる特殊な DNA構造をとる場所が多数存在します。この構造は遺伝子の働きに重要と考えられています。ATRXタンパク質はこの「グアニン四重鎖」に結合し、遺伝子が正常に働くように調節します。5-アミノレブリン酸を服用すると、体内でグアニン四重鎖に作用する物質であるポルフィリンが産生され、 ATRXタンパク質の機能を補うことができることがわかりました。グアニン四重鎖はその他の難治性疾患の病態にも関与しており、今回の発見は新しい創薬標的発見の可能性に寄与することが期待できます

本成果は2018年5月21日(日本時間22日)に英国学術誌Nature Medicine(電子版)に掲載されます。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業「クロマチンリモデリング因子ATRXタンパクの異常により発症するX連鎖αサラセミア/精神遅滞症候群のアミノレブリン酸による治療法の開発」(研究開発代表者:和田敬仁)及び文部科学省科学研究費助成事業の支援を受けて行われました。

研究概要図

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

福永 浩司
東北大学大学院薬学研究科・教授
TEL:022-795-6836
E-mail:kfukunaga*m.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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