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ラン科植物サギソウにおける緑花変異の原因遺伝子特定

【発表のポイント】

  1. ラン科植物の花は「唇弁」や「ずい柱」など特徴的な花器官を有している。これらの花器官形成は興味深いテーマだが、非モデル植物であるため分子機構を明らかにするのは困難であった。
  2. 本研究ではラン科植物サギソウの緑花変異品種'緑星'を用いて、様々な花器官形成遺伝子の構造と発現を解析することにより、原因遺伝子を特定することに成功した。
  3. 本研究成果により、ラン科植物の緑花品種の開発などに繋がると期待される。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科大学院生の三苫舞、同大学大学院生命科学研究科の菅野明准教授は、ラン科植物サギソウの緑花変異品種'緑星'を用い、この緑花変異が花器官形成遺伝子の一つEクラス遺伝子1)の機能欠損によって引き起こされることを明らかにし、またEクラス遺伝子がラン科植物特有の花器官である「ずい柱」の形成に重要であることを明らかにしました。本研究はラン科植物の花器官形成機構の解明に繋がるとともに、緑花品種の作出に向けた分子育種への応用が期待されます。本成果は、6月19日スイス科学雑誌Frontiers in Plant Science電子版に掲載されました。

図1. サギソウの花
野生型品種'青葉'(A)および緑花変異品種'緑星'(B)

【用語説明】

1)Eクラス遺伝子

花器官形成遺伝子の一つ。A、B、Cクラスの転写因子と複合体を作って機能し、花器官を決定する。2)参照。

2)ABCE モデルおよび改変ABCE モデル

花器官を同心円状に4 つの領域 (whorl) に分けた場合に、各whorl におけるA、B、C およびE の4 つのクラスの遺伝子発現パターンと形成される花器官の関係を示したモデル。双子葉植物におけるABCEモデルでは、A+E クラス遺伝子が共に機能するとがく片が、A+B+E クラス遺伝子が共に機能すると花弁が、B+C+E クラス遺伝子が共に機能すると雄ずいが、そしてC+E クラス遺伝子が共に機能すると雌ずいが形成されると説明されている。一方、単子葉植物の花は、ユリやチューリップのように花被が2層の花弁状花被から構成されており、Bクラス遺伝子の発現が一番外側のwhorl 1まで拡大した改変ABCE モデルで説明されている(Ohtani et al. 2016)。ラン科植物も単子葉植物で、多くのランは2層の花弁状花被を有することから、基本的には改変ABCEモデルによって説明される。しかしながら、本研究の材料であるサギソウは緑色の3枚のがく片、白色の2枚の花弁と1枚の唇弁、ずい柱を有しており、双子葉植物と同じABCEモデルで説明されることが明らかになっている(Kanno 2016)。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 菅野 明 (かんの あきら)
電話番号: 022-217-5725
Eメール: kanno*ige.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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