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胸部大動脈瘤の発症と破裂に関わる新規分子を発見
- 分子機序の解明から根治治療薬の開発へ -

【研究のポイント】

  • 胸部大動脈瘤について、外科的根治治療の他に、予防や内科的根治治療法の開発が待ち望まれている。
  • 胸部大動脈瘤患者の大動脈血管平滑筋細胞を用いた解析から、胸部大動脈瘤の発症と破裂に関わる新規分子SmgGDSタンパク質を発見した。
  • SmgGDSを胸部大動脈に局所的に過剰産生させることにより、胸部大動脈瘤の形成が著しく抑制され、同疾患に対する新規治療法になる可能性を見出した。

【研究概要】

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明(しもかわ ひろあき)教授、佐藤公雄(さとう きみお)准教授、野木正道(のぎ まさみち)医師の研究グループは、同大学心臓血管外科学分野と共同で胸部大動脈瘤注1の病因タンパク質の網羅的探索を行った結果、これまで胸部大動脈瘤との関連が全く示唆されていなかった新規病因タンパク質SmgGDS注2を発見しました。遺伝子改変動物や大動脈平滑筋細胞を用いた解析や多くの臨床検体を用いた検討の結果、SmgGDSが胸部大動脈瘤の発症の原因となる大動脈平滑筋細胞の脆弱化を抑制し、その病態に深くかかわっていることを解明しました。
筋細胞を用いた解析や多くの臨床検体を用いた検討の結果、SmgGDSが胸部大動脈瘤の発症の原因となる大動脈平滑筋細胞の脆弱化を抑制し、その病態に 深くかかわっていることを解明しました。
 本研究は、発症機序に未解明な点が多く残されている胸部大動脈瘤の新規分子機序の解明と共に、新規治療ターゲットとしてのSmgGDSの役割を解明したものであり、新規根治治療薬の開発などの臨床応用につながることが期待されます。
 本研究成果は、6月19日(米国東部時間、日本時間6月20日)に米国心臓協会(American Heart Association, AHA)の学会誌であるCirculation 誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業、及び日本学術振興会科学研究費助成金の支援を受けて行われました。

図 1. 胸部大動脈瘤

【用語解説】
注1. 胸部大動脈瘤:胸の中の大動脈が何らかの原因で拡大する疾患。症状が出現せず病気が進行することが多く、破裂すると致命的となる。現在確立されている内科的治療は血圧コントロールのみであり、根治治療は外科的治療である。
注2. SmgGDS:細胞の骨格タンパク質の維持・増殖や分化を制御する因子(低分子量Gタンパク)を活性化させるタンパク質の一つ。

この手法により合成された新規アニリン化合物が新薬や新材料の開発に応用されることが期待できます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科循環器内科
教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
電話番号: 022-717-7152
Eメール: shimo@cardio.med.tohoku.ac.jp

(報道担当)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
Eメール: pr-office@med.tohoku.ac.jp

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