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植物成長に伴う細胞壁ペクチン合成の仕組みを解明 〜植物の陸上進出の鍵でもあった〜

【発表のポイント】

  • 植物はペクチンを主成分の一つとする細胞壁を合成しながら成長する。
  • ペクチン主鎖を合成する糖転移酵素を発見し、ペクチン合成の仕組みを解明した。
  • この酵素は、これまで報告されていない遺伝子ファミリーに属していた。
  • この遺伝子ファミリーは、植物の陸上化と共に現れたもので、ペクチン合成は植物の陸上化の鍵を握る。

【概要】

生命科学研究科植物細胞壁分野の西谷和彦教授と黒羽剛助教は、立命館大学(学長:吉田美喜夫)生命科学部の石水毅准教授、加藤耕平(大学院生)、立命館グローバル・イノベーション研究機構の竹中悠人博士研究員らの研究グループ、また、名古屋大学、甲南大学との共同研究で、植物が成長する際に作られる植物細胞壁(注1)成分ペクチン(注2)の合成の仕組みを世界で初めて明らかにしました。

ペクチンは複数の糖成分が鎖のようにつながって形成されますが、その主鎖を合成する糖転移酵素(注3)を発見し、この酵素が新しい遺伝子ファミリー(注4)に属することを見出しました。この遺伝子ファミリーは植物の陸上化(注5)と共に現れたものであり、ペクチンを作るようになったことが、植物が進化の過程で陸上化した一つの要因であることを示しました。本発見により、植物の伸長成長の仕組みの一端が明らかとなり、成長を早めた作物の育種に応用できます。ペクチンはゲル化剤として食品添加剤にも用いられており、発見した酵素を活用して新規機能を持つゲル化剤の開発への応用も考えられます。

本成果は、2018年8月6日英科学誌Natureの姉妹誌「Nature Plants」2018年8月号に掲載されました。また2018年8月号のNews & Viewsのコーナーで本研究が記事として紹介されます。本研究は、文部科学省科学研究費補助金、日本学術振興会科学研究費、立命館グローバル・イノベーション研究機構の支援を受けて行われました。

図.植物の成長に関わる細胞壁ペクチンの合成酵素を発見した

【用語解説】

注1 植物細胞壁:
植物細胞の外側を取り囲み、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンの多糖類、リグニンを主成分とする構造体。ペクチンに富み、成長時に合成される一次細胞壁と、セルロースやリグニンに富み、成長終了後に肥厚する二次細胞壁に分けられる。

注2 ペクチン:
成長に関わる一次細胞壁や細胞接着に関係する細胞間に多く存在する。ガラクツロン酸、ラムノースなど13 種類の糖成分から構成される複雑な構造をしている。ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、ホモガラクツロナンといった3つのドメインから構成されている。条件によってゲル化する性質をもつ。

注3 糖転移酵素:
糖を転移して、多糖などの糖質化合物を合成する酵素の総称。糖鎖の構造は糖転移酵素の特異性により決められている。

注4 遺伝子ファミリー:
塩基配列および機能が類似している遺伝子群。進化の過程で現れたり、遺伝子重複により数が増えたりする。

注5 植物の陸上化:
進化の過程で植物の祖先が水中から陸上へ進出したこと。約5億年前に、緑藻類から進化して車軸藻類(もっとも原始的と考えられている陸上植物)が現れたと考えられている。

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問い合わせ先

東北大学大学院生命科学研究科
教授 西谷和彦(にしたに かずひこ)
電話 022-795-6700
E-mail nishitan*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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