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i-STrap法:微量の血液から被ばく線量の推定が可能に〜被ばく線量が多いと血中の抗酸化能が低下する〜

【発表のポイント】

  • 被ばく線量が多くなると血中の抗酸化能注1が低下する現象を発見した。
  • わずか100 μLの血液から抗酸化能をi-STrap法注2により測定することができた。
  • 放射線事故災害時のトリアージ注3において被ばく線量推定ができる可能性が示された。

【研究概要】

東北大学災害科学国際研究所災害放射線医学分野の稲葉洋平(いなば ようへい)助教および千田浩一(ちだ こういち)教授(医学系研究科放射線検査分野)、産業医科大学の盛武敬准教授ら、筑波大学の孫略研究員ら、九州保健福祉大学の佐藤圭創教授、筑波技術大学の平山暁教授の共同研究グループは、被ばく線量が多くなると血中の抗酸化能が低下する現象を発見しました。本研究によって、被ばく線量計を所持していない場合でも、大規模放射線事故災害時の被ばく線量を推定できる可能性が示唆されました。今後、放射線災害等におけるトリアージや健康被害の評価に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2018年5月、英科学誌Scientific Reports誌(電子版)に掲載されました。

【用語説明】

注1.抗酸化能:ラジカルや過酸化水素といった、体内で生体物質を傷害する有害な活性酸素種を消去する能力。

注2.i-STrap法:既知量のラジカルを血液サンプルに添加した後、サンプル内で残ったラジカルの量を測定することで、抗酸化能を評価する方法(同仁化学研究所)。電子スピン共鳴法注4(ESR後述)という手法で測定する。ESRの信号が大きくなるほど、抗酸化能は低いということになる。

注3.トリアージ:患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。医療体制・設備を考慮しつつ、傷病者の重症度と緊急度によって分別し、治療や搬送先の順位を決定する。

注4.電子スピン共鳴法(ESR、 Electron Spin Resonance):フリーラジカルの検出にも用いられる方法。強い磁場の元では試料中の、二重結合(不対電子)を持つ脂質ラジカルは、ある特定の周波数のマイクロ波を吸収すると、共鳴現象により強い信号を出す。その信号の大きさを測定することでラジカル量を測定できる。

図1.i-STrap法による抗酸化能の測定。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科放射線検査学分野
(災害科学国際研究所災害放射線医学分野)
 教授 千田 浩一(ちだ こういち)
 助教 稲葉 洋平(いなば ようへい)
電話番号: 022-717-7943
Eメール: chida*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
FAX番号: 022-717-8187
Eメール:  pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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