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Fe-Ga単結晶の板材の低コスト量産製造技術を確立 電池を代替する振動発電デバイスの大幅コスト低減が実現、各分野のIoT実用化が加速

【発表のポイント】

  • Fe-Ga単結晶の大型結晶の製造に成功しました。
  • 大型Fe-Ga単結晶を低コストで板状成形する技術を確立しました。
  • 単結晶製造・板状成形の低コスト量産が実現可能となり、磁歪(じわい)(*1)振動発電(*2)技術の実用化への道筋がつきました。
  • 同素材使用の発電デバイスと応用モジュール・システムをMEMSセンシング&ネットワークシステム展2018(10/17-19@幕張メッセ)で展示する予定です。

【概要】

磁歪材料の1つであるFe-Ga単結晶は、非常に優れたエネルギー変換材料であり、小型で高出力、高感度な振動発電デバイスの根幹部分を占める材料です。振動発電が実用化すれば、ボタン電池や乾電池を利用しない無線通信モジュールが実現でき、利便性が大幅に向上、見守りから防犯、防災、工場の機械の保全、インフラの管理など、さまざまな分野や用途でIoT(*3)を普及させることができます。振動発電デバイスはFe-Ga単結晶の「板」を利用したシンプルな構造で耐久性も高く実用的ですが、この「板」の価格が高いのが本格的な実用化に向けた大きな課題でありました。

今回、本研究チームでは、チョクラルスキー(CZ)法(*4)により従来にない直径4インチ直胴(*5)10センチの巨大Fe-Ga単結晶合金の製造に成功しました(4インチ=約10センチ)。さらに、この単結晶を、マルチワイヤーソー(*6)を用いたスライス加工により、低コストで板状に成形する技術を確立しました。これにより従来の乾電池利用のモジュール・システムに比べて1/2以下の価格で提供できることになります。本技術の確立により、単結晶製造における光熱費や人件費を大幅に抑制することが可能になり、材料ひいてはデバイスの量産化にめどがつき、磁歪振動発電の実用化への道筋がつきました。今回の単結晶板を使用した発電デバイスや、そのデバイスのさまざまな応用モジュール・システムをMEMSセンシング&ネットワークシステム展2018(10/17-19@幕張メッセ)で展示する予定です。

なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出(研究統括:谷口研二 (大阪大学 名誉教授))」の研究課題「磁歪式振動発電の実用化に向けた革新的メカニズム・材料の創成(代表研究者:上野 敏幸 (金沢大学))」と東北大学出資事業BIP(ビジネスインキュベーションプログラム)の支援を受けて行われました。

写真1:手前が直径2インチ直胴25センチ、奥が直径4インチ直胴10センチのFe-Ga単結晶インゴット(*7)

【用語・解説】

*1. 磁歪: 磁場を与えたときに、延びたり縮んだりする磁性体の性質。磁歪は、周辺磁場によって磁性体中の磁壁が移動することによって生じる。

*2. 磁歪振動発電: 磁歪を持つ材料は、素材を延ばしたり縮ませたりすると、磁束密度の変化が生じる。このような磁歪材料を用いた発電のこと。磁歪材料による磁束密度の変化をコイルでピックアップし、電力として利用する。

*3. IoT (Internet of Things): あらゆるものをインターネットにつなぐこと、また、その技術のこと。無線での接続が体勢を占めると予測されているが、電源の寿命がボトルネックとなっていることも、普及が期待通り進んでいない原因と言われている。

*4. チョクラルスキー法(Czochralski method): 単結晶育成法の1つで、るつぼの中に融かした原料に、上部から種結晶を浸した後、上方向に引き上げることで、単結晶を製造する方法。完全性の高い(欠陥などが極小の)結晶が製造可能な装置で、シリコンの製造でも有名。

*5. 直胴: 結晶の胴部で、直径の変化がない部分を指す。

*6. マルチワイヤーソー:ワイヤーソー(ワイヤー状の一種の鋸)を何本も並べて複数の板材を一度に切断可能な切断装置のこと。

*7. インゴット: 融液から固化した固体のことであり、ここでは、チョクラルスキー法で作製したままのFe-Ga単結晶の塊のこと。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 鈴木茂
電話:022-217-5168
E-mail:ssuzuki*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室(担当:伊藤)
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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