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"印刷で"配線・接合"銅ナノペースト":貴金属代替へ ~プリンテッドエレクトロニクスと次世代パワーデバイス接合は銅の時代へ~

【発表のポイント】

  • 開発した銅ナノ粒子は、140 °C程度から銅ナノ粒子の焼結が開始され、これまでにない低温焼結特性を示すことが確認できた。
  • あらたに開発した合成プロセス(水溶性銅錯体室温還元法)は、水中、大気下、室温という極めて低環境負荷の条件において、低温焼結性を有する銅ナノ粒子の調製が可能である。
  • 開発した銅ナノ粒子から調製した銅ナノペースト※1は、プリンテッドエレクトロニクス※2による回路形成や次世代パワーデバイス※3の接合材料として用いられている銀ペーストに置き換わる材料となることが期待できる。

【概要】

東北大学 多元物質科学研究所(所長 村松淳司)の 蟹江澄志 准教授らと三井金属鉱業株式会社(東京都 代表取締役社長 西田計治)の上郡山洋一博士らの共同研究により、低温焼結性を有する銅ナノ粒子を水中、大気下、室温という、極めて低環境負荷の条件において合成するプロセスをあらたに開発しました。

得られた銅ナノ粒子表面には、耐酸化性を持つ有機物が吸着しており、この有機物成分が低温(140 °C程度)で分解することで、銅ナノ粒子の焼結が開始されることを解明しました。

今回開発した銅ナノ粒子をペースト化することで、180 °C程度の低温焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)でPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムやPI(ポリイミド)フィルム上に銅粒子間が焼結した良好な厚膜銅配線形成(膜厚:14 μm)が可能です。これにより、プリンテッドエレクトロニクスによるIoTセンサーの回路形成材料などとして銀ペーストやハンダ代替が期待できます。

また、模擬接合構造(銅基板間を銅ペーストで接合する)を用いた金属間接合材料※4としての評価では、200 °C程度の低温焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)で高いシェア強度(>30 MPa)を示すことを確認しており、次世代パワーデバイス(SiCやGaN)の接合材料として実用化が期待できます。

なお、本成果は、1月29日(火)付で、nature.comが管理するオープンアクセス電子ジャーナル誌の「Scientific Reports」誌に掲載されました (DOI: 10.1038/s41598-018-38422-5)。

図1. 焼結特性比較概略図
(a):既往の合成法で得た銅ナノ粒子、(b):水溶性銅錯体で得た銅ナノ粒子

詳細(プレスリリース本文)PDF

【用語説明】

※1.銅ナノペースト:
有機溶媒中にナノサイズ(100 nm以下)の銅粒子を主成分に、他に接着成分や無機物を分散させた粘性の高い流動体です。食パンに塗るジャムやクリームの様な粘性を有します。

※2.プリンテッドエレクトロニクス:
電子デバイスの回路配線や絶縁膜等を印刷技術によって作製する技術です。必要な箇所に必要な量だけ金属粒子又は金属酸化物粒子を含むペースト(インク)を印刷し、加熱や紫外線等で硬化させ導体・絶縁体等を形成するため、環境に優しい製造技術と認識されています。

※3.次世代パワーデバイス(パワー半導体):
パワー半導体は、交流を直流に変換したり電圧を昇圧・降圧したりし電力を制御するデバイスです。現在は半導体のシリコン(Si)が使われていますが、次世代パワーデバイスではシリコンカーバイト(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を使用することで、電力損失を大幅に削減することができると期待されています。

※4.金属間接合材料:
電子部品を基板上の配線や電極に接合する材料です。接合材料としてハンダが一般的に使用されています。

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
准教授 蟹江 澄志(かにえ きよし)
電話:022-217-5165
E-mail:kanie*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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