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炎症反応を強力に抑える活性イオウ誘導体の開発に成功

【発表のポイント】

  • 活性イオウはわれわれの細胞で作られる生体成分で、抗酸化作用やエネルギー代謝への働きなどが知られている。
  • 細胞内の活性イオウ含量を増やすことができる新しい活性イオウ誘導体の開発に成功した。
  • 活性イオウ誘導体が極めて高い抗炎症作用を持つことを明らかにした。
  • 致死性のエンドトキシンショックに対して活性イオウ誘導体が優れた治療効果を示すことを発見した。

【概要】

熊本大学大学院生命科学研究部の澤智裕(さわ ともひろ)教授らのグループは、東北大学大学院医学系研究科 赤池孝章(あかいけ たかあき)教授らとの共同研究により、細胞や組織に含まれる活性イオウと呼ばれる生体成分を人工的に増やすことができる新しい活性イオウ誘導体の開発に成功しました。この活性イオウ誘導体は保存安定性に優れ、また細胞に作用させると速やかに細胞内に浸透して細胞内の活性イオウ含量を大きく増加させます。マクロファージと呼ばれる免疫細胞を使った実験から、今回開発した活性イオウ誘導体が極めて高い抗炎症作用を持つことが明らかとなりました。さらに、過剰な免疫反応の活性化によって致死的な病態となるエンドトキシンショックを起こしたマウスに活性イオウ誘導体を投与すると、マウスの生存率の著しい改善が認められました。今回の結果は、活性イオウが免疫機能の調節に密接に関わることを明らかにし、さらにこの活性イオウを人工的に増やすことで炎症病態を改善できることを示した画期的な成果です。今後、活性イオウを基軸とした新しい抗炎症療法への展開が期待されます。

本研究成果は、2019年3月7日米国東部(EST)時間11:30(日本時間3月8日(金)01:30)に、Cell Pressの「Cell Chemical Biology」に掲載されました。

本研究は、文部科学省 新学術領域研究「酸素生物学」、AMED感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)「細菌の酸化ストレス耐性を標的とした新規治療戦略の開発」(研究開発代表者 澤智裕)、および科学研究費補助金などの支援を受けて行われました。

【用語解説】

活性イオウ:
アミノ酸のひとつであるシステイン(CysSH)に過剰なイオウ原子が1つ付加したシステインパースルフィド(CysSSH)や、複数付加したシステインポリスルフィド(CysS[S]nH; n > 2)を含む生体成分。過剰なイオウ原子を持つことで、もとのシステインよりも抗酸化力が高まっている。生体内では酸化ストレスに対する保護作用など多彩な機能があると考えられている。

活性イオウ誘導体:
細胞に作用させたり、動物に投与することによって細胞内の活性イオウ量を増やすことができる化合物。今回の研究で開発した活性イオウ誘導体は、それ自身が活性イオウのもととなる過剰なイオウ原子を含む誘導体(ドナー)であり、細胞に作用させると細胞内のシステインやグルタチオンにイオウ原子を渡すことによって細胞内の活性イオウ量を増やしている。

エンドトキシンショック:
エンドトキシン(内毒素)はグラム陰性菌の外膜に含まれるリポ多糖。敗血症などによって多量のエンドトキシンが体内に放出されると、過剰な炎症反応が引き起こされ、その結果、血管拡張による急激な血圧低下や血管内血液凝固による多臓器不全などのショック症状(エンドトキシンショック)をきたす。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野
担当:教授 赤池 孝章(あかいけ たかあき)
電話: 022-717-8164
e-mail:takaike*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話:022-717-7891
FAX:022-717-8187
e-mail:pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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