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世界初の冠攣縮性狭心症に関する国際共同研究 -明らかになった臨床像や予後の相違-

【研究のポイント】

  • これまで日本人に多いとされてきた冠攣縮性狭心症注1は、欧米人でも有病率が高いことが近年報告され、改めて注目されている。
  • 本研究は、欧米人と日本人の冠攣縮性狭心症患者の特徴と長期予後における人種差を国内外の多施設で前向きに検討した世界で初めての研究である。
  • 本研究の結果、冠攣縮性狭心症症例において欧米人症例と日本人症例とでは、男性の比率やその発作の好発時間に明確な差異があり、欧米人において冠攣縮発作による不安定狭心症注2や心臓死がより多く発生していた。

【研究概要】

冠攣縮性狭心症は、心臓の動脈(冠動脈)の血管の筋肉(血管平滑筋層)が一過性に過剰に収縮(攣縮)することで血管が狭窄・閉塞をきたし、冠動脈の血流が減少・途絶することで心筋が虚血状態になり胸痛等の症状が起きる病気です。これまで日本において研究が盛んに行われてきた疾患ですが、近年、欧米人でもその有病率が高いことが分かり、改めて注目を集めています。東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明(しもかわ ひろあき)教授、高橋潤(たかはし じゅん)講師、佐藤公一(さとう こういち)医師らの研究グループは、冠攣縮性狭心症患者では、臨床的特徴に欧米人と日本人の間に明らかな差異があり、また、長期予後を検討した結果、日本人患者に比べ欧米人患者で冠攣縮発作による不安定狭心症入院や心臓死がより多く発生していることを初めて明らかにしました。さらに下川教授らが近年開発した冠攣縮狭心症の予後予測指標であるJCSAリスクスコア注3が、欧米人患者においても予後を明確に層別化でき、有効であることを示しました。本研究は、冠攣縮性狭心症患者の人種差について明らかにした世界初の国際共同研究です。

本研究成果は、2019年2月26日に、International Journal of Cardiologyにオンライン掲載されました。本研究は、日本心臓財団の研究費補助金の支援を受けて行われました。

【用語解説】

注1. 冠攣縮性狭心症(vasospastic angina; VSA):
冠攣縮により狭心症状を生じる疾患。多くが安静時、特に夜間から早朝の胸痛発作を特徴とする。しばしば心電図上で虚血性変化を伴う。虚血性心臓病患者の突然死の重要な原因の一つとされる。喫煙や精神的・肉体的ストレスが重要な要因となることが知られている。薬剤による冠攣縮誘発試験および自然発作によって診断がなされる。治療の第一選択薬はカルシウム拮抗薬であるが、長時間作用型硝酸薬などその他の冠拡張薬も推奨されており、治療抵抗例に対する併用効果が期待される

注2. 不安定狭心症:
狭心症発作の頻度が増加したり、胸痛の程度が増強するなど増悪傾向にある状態の狭心症で、心筋梗塞に移行する可能性が高い危険な病態。

注3. JCSAリスクスコア:
わが国の冠攣縮研究会で行われた多施設共同研究で開発されたスコアで、冠攣縮性狭心症の予後と関連する「院外心停止の既往」、「喫煙」、「安静時狭心症」、「器質的有意狭窄」、「多枝冠攣縮」、「発作時心電図ST上昇」、「β遮断薬の使用」の7項目にそれぞれ重み付けを行い点数化し、合計したもの。合計点が大きくなるほど、将来、心筋梗塞・不安定狭心症などが発生する可能性が高くなることが報告されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科循環器内科
教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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