本文へ
ここから本文です

東北メディカル・メガバンク計画参加者の血液細胞からのiPS細胞樹立に成功 ~15万人分の保存血液細胞がiPS細胞研究に利用できる可能性~

【発表のポイント】

  • 東北大学東北メディカル・メガバンク機構と京都大学iPS細胞研究所の共同研究により、東北メディカル・メガバンク(TMM)計画のコホート調査に参加された住民のうち、6人分の保存血液細胞からiPS細胞を樹立することに成功しました。
  • この成果により、TMMのバイオバンク*1に保存されている約15万人分の血液細胞から、必要に応じてiPS細胞を樹立する道が開けました。
  • 今後、TMMのバイオバンクに登録されている遺伝情報や健康調査情報とiPS細胞技術を組み合わせることにより、細胞の機能に影響を与える遺伝子多型*2を同定する研究や、個人の特徴に合った疾患治療法や予防法を開発する研究が進展することが期待されます。

【概要】

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、2016年に開始した共同研究において2018年10月に、TMM計画のコホート調査*3に参加した地域住民のうち6人分の血液細胞からiPS細胞を樹立することに成功しました。

TMM計画では、2013年からToMMoと岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が協力して宮城県・岩手県の住民を対象としたコホート調査に取り組み、15万人以上の参加者から提供された生体試料や、健康に関わる種々の情報を保管するバイオバンクを構築してきました。TMMのバイオバンクは、血清、血漿(しょう)、血液由来のDNA、尿とともに、血液細胞(単核球)も保管しており、培養可能な形で血液細胞試料を保有する国内最大級のバイオバンクとなっています。また、TMMでは、15万人のコホート調査参加者から提供された生体試料を使って参加者全員のゲノム解析を計画しており、既に約5,000人分の全ゲノム解析と約10万人分のDNAマイクロアレイ解析*4を完了しています。

一方、CiRAはこれまで、様々な健康状態の方から細胞をご提供いただき、疾患特異的iPS細胞*5やその対照として重要な健常人由来iPS細胞の樹立に取り組んできました。iPS細胞から特定の臓器や組織の細胞を作製することにより、細胞をご提供いただいた方の臓器や組織の特徴をよく再現できることが知られています。

今回の成果により、TMMのバイオバンクから遺伝情報等をもとに細胞を選択してiPS細胞を樹立し、それらを分化させて、細胞や組織の機能に対する遺伝子型の影響を様々な解析研究に用いることが可能になり、個別化医療*6の進展に貢献することが期待されます。

【用語等説明】

*1. バイオバンク:生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う。TMM計画のバイオバンクは、コホート調査の参加者から血液・尿などの生体試料を集める。

*2. 遺伝子多型:ヒトのゲノムDNA配列の個人間の違い。

*3. コホート調査:特定の集団を一定期間追跡することによって、環境要因や遺伝的要因と疾病発生の関連を調べる調査。

*4. DNAマイクロアレイ解析:多数のDNA断片を載せた基盤を用いた遺伝子情報の網羅的な解析方法。TMM計画では、ゲノム情報について、個人毎の1つの塩基配列の違い(一塩基多型、SNP)を解析している。

*5. 疾患特異的iPS細胞:さまざまな疾患の患者さんの体細胞から作製したiPS細胞。疾患メカニズムの研究や創薬スクリーニング研究に利用できると期待されている。

*6. 個別化医療:患者さんの遺伝的背景、生理的状態、疾患の状況に応じて、それぞれに最適な治療を行うこと。例として、一人ひとりのゲノム情報に合わせて、原因となる遺伝子に直接作用する薬剤や、副作用を起こしにくい薬剤を選択することが挙げられる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(ToMMoの研究に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
バイオバンク室
室長 峯岸 直子(みねぎし なおこ)
電話番号:022-272-3106

(ToMMoの報道に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
広報戦略室
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:f-nagami*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ