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被災行政職員のストレス反応の軌跡 - 職場でのコミュニケーションの大切さ明らかに -

【発表のポイント】

  • 大規模災害の現場に身を置いている被災行政職員のストレス反応の軌跡が明らかになった。
  • 行政職員の精神的なストレス反応の軌跡は、震災から約1年で大きく低減し、その後は横ばいになり、3年後にゆっくりであるが低減するという2段階プロセスで減少する。
  • また、リスクファクター(職場でのコミュニケーション、不十分な休息、家族の行方不明や死、自宅外での生活経験)を抱えている場合にはストレス反応が高くなる一方でリスクファクターは長期的なストレス反応の軌跡に影響を与えない。さらに、職場でのコミュニケーションの量がストレス反応の低減に最も影響を与える。
  • この知見は、被災者のメンタルヘルス対策に関する大きな指針の1つになる。特に、多くの時間を過ごす職場でのコミュニケーションは精神的健康の軽減に最も影響することから、職場のコミュニケーションが重要になる。

【概要】

東北大学大学院教育学研究科 若島 孔文(わかしま こうぶん)准教授、北海道教育大学釧路校 浅井 継悟(あさい けいご)講師、東北福祉大学総合福祉学部 平泉 拓(ひらいずみ たく)助教、香川大学医学部 野口 修司(のぐち しゅうじ)准教授の研究グループは、東日本大震災における被災自治体職員の長期的なストレス反応の状況について報告しました。

地震等の大規模災害で現場に身を置く行政職員は、緊急対応等により精神的健康を悪化させやすいリスクを抱えている一方で、これまで行政職員の災害に関連したストレス反応については充分な縦断実証研究がなされていませんでした。

本研究では、東日本大震災において甚大な被害を受けた宮城県石巻市職員を対象とした4年間(2011年6月~2015年7月、計6回)の健康調査を分析しました。

分析の結果、精神的なストレス反応の軌跡は、(1) 震災から約1年で大きく低減し、横ばいになり、3年後にゆっくりではあるが低減するという2段階プロセスの減少があること、(2) 4つのリスクファクター(職場でのコミュニケーション、不十分な休息、家族の行方不明や死、自宅外での生活経験)のそれぞれを抱えている場合にはストレス反応が高くなる一方で、長期的なストレス反応の軌跡には影響を与えないこと、(3) 4つのリスクファクターのうち、職場でのコミュニケーションの量が最もストレス反応の低減に影響があることを明らかにしました。

これまで災害時における行政職員のメンタルヘルスのリスクや、地域復興における行政職員の社会的資源としての重要性については述べられている一方で、災害に関連した行政職員の長期的なストレス状況については実証的な研究が十分になされていませんでした。本研究の知見は、今後も起こりうる大規模災害において長期に亘って尽力を続けていかなければならない行政職員のみならず職場におけるメンタルヘルスに関する大きな指針の1つになると期待されます。特に、多くの時間を過ごす職場でのコミュニケーションは精神的健康の軽減に最も影響することから、職場のコミュニケーションを考慮した支援の設計が重要になります。

本成果の関する論文は2019年4月16日にNature関連誌であるPalgrave Communicationsに掲載されます。

本研究は、日本心理学会「2016年度災害からの復興のための実践活動及び研究」の助成を受けて行われました。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院教育学研究科
准教授 若島 孔文(わかしま こうぶん)
電話番号:(022) 795-6139
E-mail: k_wakashima*sed.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学教育学部・教育学研究科総務係
電話番号:(022) 795-6103
E-mail: sed-syom*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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