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細胞表面の情報センサーの基本原理を解明 ―センサータンパク質に作用するくすりの開発に貢献―

【発表のポイント】

  • くすりの主要な標的となる、細胞表面のセンサータンパク質が細胞に情報を伝える仕組みを明らかにした。
  • 機械学習を用いて、遺伝子情報(アミノ酸配列)から細胞表面センサーの機能を予測する手法を開発した。
  • 細胞に特定の情報を入力することのできる人工センサーを創製した。
  • 情報伝達の知見を利用することで、細胞表面センサーに作用する新たな疾患治療薬や副作用を抑えたくすりの開発につながる。

【概要】

東北大学大学院薬学研究科の井上飛鳥准教授、青木淳賢教授とドイツハイデルベルク大学のRussell博士らの研究グループは、くすりの主要な作用標的である細胞表面に存在するタンパク質群の情報伝達様式を解明しました。私たちの体にはこのタンパク質群が約280種類存在し、ホルモンに応答する情報伝達センサーとして個々の細胞に備わっています。このセンサータンパク質の機能異常は数々の疾患を引き起こします。くすりは異常となったセンサータンパク質に結合して、その機能を正常化することで疾患を治す働きがあります。一方で、このセンサータンパク質が細胞に伝える情報の種類は多様であり、その一部は副作用に関わることが知られているものの、全容は分かっていませんでした。今回、研究グループは約150種類にも及ぶセンサータンパク質群の情報伝達様式を明らかにしました。得られた実験データを基に、センサータンパク質のアミノ酸配列から情報伝達様式を高精度に予測するアルゴリズムを開発し、残りの約130種類のセンサーの情報伝達様式をスコア化するとともに、特定の情報を入力することのできる人工センサーを作製しました。この研究成果は、薬効と副作用の分子機序の解明に貢献するとともに、未だ治療薬のない疾患に対するくすりの開発を加速することが期待されます。

この研究成果は、米国科学誌 Cellのオンライン版に2019年5月31日(日本時間)に掲載されました。

図1:GPCRとGタンパク質の相互作用を検出する手法。Gタンパク質欠損細胞にキメラGタンパク質を発現させ、ホルモン様分子(リガンド)を加えた際のTGFα切断応答を測定する。細胞外のアルカリホスファターゼによる着色反応を測定することで、キメラGタンパク質とGPCRの相互作用を定量化できる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院薬学研究科
担当 井上 飛鳥(准教授)
電話 022-795-6861/022-795-4528
E-mail iaska*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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