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室温動作スピントロニクス素子を用いて 量子アニーリングマシンの機能を実現

【発表のポイント】

  • 室温動作が可能な新概念・揺らぎ利用スピントロニクス素子を開発
  • 開発したスピントロニクス素子を疑似的な量子ビット(pビット)として用いたデモシステムを構築し、量子アニーリングと同様な手法を適用して因数分解を実証
  • 最適化問題などの既存のコンピュータが苦手とする複雑なタスクを効率的に処理する新たな方式として期待

【概要】

国立大学法人東北大学電気通信研究所の大野英男教授(現総長)、深見俊輔准教授、William Andrew Borders博士後期課程学生らは、米国パデュー大学のSupriyo Datta教授のグループと共同で量子ビットと似た機能を有する新概念スピントロニクス素子を開発し、次いでそれを用いて量子アニーリングマシンを模倣したシステムを構築し、室温にて因数分解の実証に成功しました。

今回研究チームが開発したスピントロニクス素子は広く研究開発が行われているものとは対極に位置するものであり、「0」状態と「1」状態が短い時間間隔で確率的に揺らぐように設計されています。これは「0」と「1」の重ね合わせ状態を制御する量子ビット(qビット)のように利用できます。実証実験では、この"疑似"量子ビット(pビット)からなるネットワークに量子アニーリングと同様な手法を適用して因数分解を行い、最適化問題を扱う手法としての汎用的な有用性を実証しました。

近年、量子アニーリングを含めた量子情報処理技術が、複雑性を伴う様々な問題を解く上で既存のコンピュータと比べて優れた処理能力を有するものとして、国内外で大変注目されています。今回開発した素子技術は量子ビットと多くの点で互換性があり、かつ室温動作が可能、ビット間の相互作用の実装や大規模化が容易であるなどの特徴を有しており、情報処理技術に新たな展開をもたらし得るものと期待されます。

本研究成果は2019年9月19日午前2:00(日本時間)に英国の科学誌「Nature」のオンライン版で公開されました。

図1)スピントロニクス素子(磁気トンネル接合素子)。上段は磁気トンネル接合の構造の模式図。下段は従来の不揮発性磁気メモリ用途と今回のpビット用途の磁気トンネル接合素子の違いの説明図。従来の不揮発性メモリ素子では0状態と1状態の間に高いエネルギー障壁があり、状態が熱揺らぎで変わらないように設計されるのに対して、スピントロニクスpビットでは熱揺らぎによって0状態と1状態の間を確率的に行き来できるように設計される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学電気通信研究所
准教授 深見 俊輔
電話 022-217-5555
E-mail s-fukami*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 電気通信研究所 総務係
電話 022-217-5420
E-mail somu*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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