2019年 | プレスリリース・研究成果
DNAオリガミによる人工細胞微小カプセルの開発に成功 -機能をプログラム可能な分子ロボットの開発に期待-
【要点】
- DNAオリガミによるナノプレートで細胞膜を模倣した、人工細胞としての微小カプセルを開発
- 人工的なイオンチャネルを形成させ、微小カプセル間のイオンの輸送に成功
- 分子コンピュータ/分子センサーを搭載した分子ロボットや、人工ニューラルネットワーク、高機能薬剤送達などへの応用に期待
【概要】
東京工業大学 情報理工学院の瀧ノ上正浩准教授、石川大輔研究員(現首都大学東京)、東北大学の鈴木勇輝助教、東京農工大学の川野竜司准教授、東京大学 大学院総合文化研究科の柳澤実穂准教授、京都大学の遠藤政幸准教授らの研究グループは、DNAオリガミ(用語1)で作製したDNAナノプレートによって細胞膜を模倣した、人工細胞(微小カプセル、図1)の開発に世界で初めて成功しました。
人工的な膜に細胞膜のような複雑な機能を持たせるには、性質や機能を自在に設計可能な物質を材料とする必要がありました。今回開発した、DNAを膜の材料とする微小カプセルでは、DNAの塩基配列を設計することで膜の機能を自在に設計でき、"プログラム"した機能をコンピュータソフトウェアのようにインストールできます。この技術は、分子コンピュータ/分子センサーを搭載した分子ロボット(用語2)や薬剤送達等への応用が期待されます。
研究成果は現地時間9月13日にドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開されました。
図1. DNAオリガミによる人工細胞微小カプセルのイメージ
【用語説明】
(1)DNAオリガミ:長い1本鎖DNA(主に7,000~8,000塩基)と多数の短い1本鎖DNA(数十塩基)から構成される、二次元・三次元のDNAナノ構造体。作りたい形状に合わせて、長い1本鎖DNAを一筆書き状に折りたたみ、相補となるように設計された短い1本鎖で固定することで、数十ナノメートルの構造体を作製できる。カリフォルニア工科大学のPaul Rothemund博士によって2006年に報告された
(2)分子ロボット:外部から分子の信号を受信し、分子の計算によって判断を下すことで、その環境に対して自律的に反応する、感覚・知能・動作を併せ持つ人工的な分子システム。
問い合わせ先
(研究に関して)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 鈴木 勇輝(すずき ゆうき)
電話:022-795-6966
Eメール: ysuzuki79r*molbot.mech.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関して)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
URA 鈴木 一行(すずき かずゆき)
電話:022-795-4353
Eメール: suzukik@fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)