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共役高分子ハイブリッドナノ薄膜の非線形光学特性の増強に成功 超高速光スイッチングデバイス素子材料への期待

【発表のポイント】

  • 共役高分子ポリジアセチレン*1のナノファイバーが優れた非線形光学特性を示すことを確認した。
  • 配向ナノファイバーと銀ナノ粒子堆積薄膜の積層制御に成功した。
  • 非線形光学感受率*2を独自の計測手法により幅広い波長範囲を精細に評価した。
  • 有機無機ハイブリッドナノ薄膜化により約7倍の非線形光学感受率の増強に成功した。
  • 超高速光スイッチングデバイス*3の実現に貢献する素子材料として期待される。

【概要】

東北大学 多元物質科学研究所の小野寺恒信助教、及川英俊教授、(国研)物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 水素材料制御グループの武田良彦副拠点長・グループリーダーの研究グループは、共役高分子ポリジアセチレンのナノファイバーと銀ナノ粒子とのハイブリッドナノ薄膜を作製し、その非線形光学感受率を独自の高精度な計測法で評価しました。その結果、ポリジアセチレンのナノファイバー単独の非線形光学感受率と比較して、ハイブリッドナノ薄膜が遙かに高い感受率を示すことの実証に成功しました。今回実証された結果は、銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴*4による光電場増強効果によるもので、超高速光スイッチングデバイス実現のための素子材料の開発にとって極めて重要であると考えられます。

本研究成果は、2019年10月11日(日本時間23時)「ACS, The Journal of Physical Chemistry C」オンライン版に掲載されました。

図1 共役高分子ポリジアセチレンナノファイバーの配向薄膜と銀ナノ粒子の堆積薄膜から構成されるサンドイッチ型「ハイブリッドナノ薄膜」の構成図。銀ナノ粒子の堆積薄膜とポリジアセチレンナノファイバーの配向薄膜は、それぞれ静電吸着法と対流自己集積法により、順次、基板上に導入・形成された。

【用語解説】

*1 共役高分子ポリジアセチレン
ジアセチレンモノマー結晶に紫外線やγ-線を照射して固相重合を誘起させると、対応する高分子であるポリジアセチレン結晶が生成する。ポリジアセチレン分子の主鎖骨格は一次元π-電子共役構造をとっている。

*2 非線形光学感受率、非線形光学材料、三次有機非線形光学材料
レーザーのような高強度な入射光を照射すると、その物質に非線形分極が生じて、様々な非線形光学現象が出現する。非線形分極は入射光の光電場の二乗と三乗に比例した項の和で現され(より正確には、2階あるいは3階テンソル)、それぞれ二次の非線形光学項、三次の非線形光学項と呼ぶ。それぞれの項の数係数を二次あるいは三次の非線形光学感受率と言う。ここで、物質としては有機物・無機物を問わず、非線形光学感受率の高い材料を非線形光学材料と呼ぶ。すなわち、三次有機非線形光学材料とは、高い三次の非線形光学感受率を示す有機系物質から構成される非線形光学材料を指す。

*3 超高速光スイッチングデバイス、光デバイス・システム
光信号を電気信号に変えることなく、そのまま処理する技術で、超高速大容量の情報処理が可能となる。制御光のON-OFFにより光学材料の屈折率を変化させ(三次非線形光学効果)、通過する光信号をON-OFFするものである(光制御−光ゲート型スイッチングデバイス)。この光スイッチングデバイスも含めて、光回路・光導波路・光メモリー・光トランジスターなどを総称して光デバイス・システムと言う。

*4 表面プラズモン、局在型表面プラズモン共鳴
物質表面近傍における自由電子の集団的なプラズマ振動(正電荷を持つ原子核による周期的ポテンシャル格子中を負電荷の電子が自由に振動運動する状態をプラズマ状態と言う。)を量子化した物理量を表面プラズモンと呼ぶ。特に、貴金属ナノ粒子に可視光を照射した場合、誘起されるプラズマ振動のことを局在型表面プラズモン共鳴と言い、貴金属ナノ粒子の表面に増強された光電場を形成する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 小野寺 恒信 (おのでら つねのぶ)
電話:022-217-5645
E-mail:tsunenobu.onodera.a4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学多元物質科学研究所
教授 及川 英俊 (おいかわ ひでとし)
電話:022-217-6357
E-mail:hidetoshi.oikawa.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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