本文へ
ここから本文です

電子スピンのトポロジカル転移を制御 -トポロジカルエレクトロニクスへの貢献-

【発表のポイント】

  • 電子スピンのトポロジカル状態を幾何学的形状によって変調できることを観測
  • スピンの位相情報をスピン干渉デバイスにより測定
  • トポロジカル状態を用いた次世代エレクトロニクスへの期待

【概要】

東北大学大学院工学研究科の新田 淳作教授らの研究グループは、スペイン・セビリア大学のDiego Frustaglia教授の研究グループと共同で、リング型と正方型形状を有すスピン干渉デバイス※1を用いてスピンの干渉効果を理論と実験により詳細に調べた結果、トポロジカル転移磁場がデバイスの幾何学的形状によって制御できることを見出しました。

磁場や電場などの外的な擾乱に対して安定に保つことができる電子状態をトポロジカル量子状態※2と呼びます。例えば量子ホール効果※3や磁気スカーミオン※4は整数で表されるトポロジカル数を変化させるような大きな外的擾乱を加えない限り安定な状態を保ちます。このため、トポロジカル量子状態を用いたエレクトロニクスへの展開に関する研究が最近盛んにおこなわれています。本研究成果は、トポロジカル量子状態を用いたスピントロニクスや量子コンピュータに新たな自由度を提供することになり、トポロジカルエレクトロニクスの分野開拓に大きく貢献することが期待されます。

本成果は、2019年12月30日に米国科学誌 Physical Review Letters にオンラインで公開されました。なお、本研究は、独立行政法人日本学術振興会 科学研究費助成事業の助成を受けて行われました。

図1 リング型と正方型スピン干渉デバイスの模式図

【用語解説】

※1 スピン干渉デバイス
電界によって制御可能なスピン軌道相互作用が作る有効磁場を用いて電子スピンを歳差回転運動させ、スピンの相対的な角度を変調し電気伝導を制御するデバイス。東北大学のグループによって理論提案され実験的に実証されてきた。

※2 トポロジカル量子状態
トポロジーという数学的な概念を用いて表される電子状態。例えば穴が1つあいたドーナツやマグカップは同じトポロジカル数(整数)を持つ状態として分類される。

※3 量子ホール効果
量子ホール効果に表れるホール電気伝導度は量子化電気伝導度にトポロジカル数を掛けた量で表される。

※4 磁気スカーミオン
磁性体の渦状スピン配向であたかも粒子のようにふるまう。スピンの空間配向の積分がトポロジカル数(整数)1以上となると安定に存在・伝搬することができる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院工学研究科 担当 新田 淳作
電話 022-795-7315
E-mail: nitta*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ