本文へ
ここから本文です

連続的に構造の異なる金属ガラスの作製に成功 - ランダム構造ガラス状態の新たな高度構造制御法の開発 -

【発表のポイント】

  • 金属ガラスの緩和状態(構造の乱雑性)を制御する技術として、2次元傾斜急冷技術を開発し、連続的に構造の異なるガラスを作製できることに成功しました。
  • 2次元傾斜緩和状態制御された金属ガラスを変形させたところ、室温での塑性変形中に変形機構の段階的な変化と相互作用が起こり、高靱性化が達成されるとともに、見かけ上の加工硬化現象の発現を確認しました。
  • 2次元傾斜緩和状態制御という新しい構造制御法を通じて、今後ランダム構造材料制御における多様な学理構築と特性改善が強く期待されます。

【概要】

金属ガラス(注1)は優れた機械的、磁気的特性や加工成型性をもつ一方で、その変形機構に起因する室温での脆性が問題となっていました。東北大学学際科学フロンティア研究所のRyu Wookha学術研究員、山田類助教、才田淳治教授のグループは、金属ガラスの緩和状態(構造の乱雑性)(注2)を制御する技術として、2次元傾斜急冷技術 (注3)を開発し、連続的に構造の異なるガラスを作製できることに成功しました。

今回の研究では、金属ガラスにおいてランダムな原子配列を試料内に連続的に2次元傾斜させて制御するという、全く新しい高度な構造制御法を開発することで、新たな材料創製と優れた特性を発現できる可能性が考えられ、本分野の学術研究に大きな知見を与えるものと考えられます。

本研究は科学研究費補助金基盤研究A(No. 18H03829)および学際科学フロンティア研究所「学際研究促進プログラム」の支援を受けて実施されたもので、英国の科学雑誌「NPG Asia Materials」に令和2年7月31日に掲載されました。

図1  金属ガラスの冷却速度と緩和状態の模式図
(早い冷却速度ほど不規則性が増し、空隙が多くなる)

【用語解説】

(注1) 金属ガラス
ある種の合金を液体状態から急冷を施すと、液体のランダム構造を室温で凍結した状態が達成され、金属ガラスと呼ばれます。金属ガラスは室温では優れた強度特性を示し、またガラス加工が可能な温度域(過冷却液体温度域)では優れた精密成型性を示すことから、その応用が大いに期待されています。しかしながら、変形が局所的な粘性流動すべりによって進行するために、室温での塑性変形性(靱性)が乏しいという欠点があり、世界的にその改善のための研究が進められています。

(注2) 緩和状態
金属ガラスは、構成原子がランダムに配置している状態です。しかし、そのランダム度は、作製時の冷却速度やその後の加工によって変化します。よりランダムな構造を未緩和状態といい、局所的な原子配列がよりルーズであって、試料中に含まれる空隙(自由体積といいます)が多い状態になります。一般に緩和したガラスは急激に脆化が進むことが知られており、実用上、未緩和状態が望まれます。研究グループでは、近年この緩和状態を制御する(未緩和状態に戻す)研究を進めています。

(注3) 2次元傾斜急冷熱処理
バルク状金属ガラスを銅製の治具ではさみ、真空中で一定温度に加熱後に片方を液体窒素冷却した銅製メッシュに接触させることで、試料内の冷却速度を2次元的に傾斜させることができる熱処理方法で、研究グループの独自のアイデアに基づいて装置を構築しました。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関して)
教授 才田淳治
東北大学学際科学フロンティア研究所 
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話:022-795-5752
Eメール:jsaida*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
URA 鈴木一行
東北大学学際科学フロンティア研究所 
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話:022-795-4353
Eメール:suzukik*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ