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金属3Dプリンターを用いたハイエントロピー合金の耐食性向上 ― 先端分野の融合による高機能金属材料の開発に成功 ―

【発表のポイント】

  • 金属3Dプリンター※1を用いて作製したハイエントロピー合金※2において、既存材を上回る耐食性を得ることに成功
  • 複雑な熱履歴を経て形成するナノ組織により不動態皮膜※3が強化されることを見出し、耐食性が向上するメカニズムを解明
  • 金属部材の安全性・信頼性向上や金属3Dプリンターを用いた新材料開発への展開が期待

【概要】

ハイエントロピー合金は異なる5種類以上の元素を同程度ずつ含む多成分合金であり、従来合金にない特異な材料特性を示すことから、世界中で大きな注目を集めています。一方、3Dプリンターは既存の製造プロセスでは困難な複雑形状の造形が可能な革新的な製造技術として社会実装も急速に進んでいます。

東北大学金属材料研究所の山中謙太准教授、白鳥浩史大学院生(研究当時、現:株式会社日立製作所)、千葉晶彦教授、同新素材共同研究開発センターの大村和世技術専門職員、仙台高等専門学校の森真奈美准教授は、株式会社日立製作所との共同研究において、金属3Dプリンターを用いて作製したハイエントロピー合金において既存材を上回る優れた耐食性が得られることを見出しました。

本研究成果は、過酷な腐食環境で使用される金属部材の安全性や信頼性向上への貢献や金属3Dプリンターを用いた新材料開発への展開が期待されます。

本研究成果は、2020年8月11日(英国時間)にNature Publishing Groupが発行するnpj Materials Degradationにオンライン掲載されました。

図1 (a) 3.5 wt.%NaCl水溶液中における往復分極試験結果および(b)試験後の表面観察結果。

【用語解説】

※1 ハイエントロピー合金
5種類程度の元素を等モル比(あるいはそれに近い組成)で含む多元系合金。種々の興味深い材料特性を示すことが明らかになっており、基礎・応用の両面で興味深い特徴を有しています。2004年に台湾清華大学のYehらとオックスフォード大学のCantorらによって独立にその概念が提案されて以降、新しい合金設計指針として大きな注目を集めており、世界的に活発な研究が行われています。

※2 金属3Dプリンター
金属材料を対象とした3Dプリンター。材料を除去することにより形状を得る既存の製造プロセスに対し、材料を垂直方向に積層することにより3次元構造を造形します。これまでに種々の方法が提案・開発されていますが、現象として金属粉末を使用する場合が多く、材料の溶融を含む高温プロセスであるため装置価格は汎用な高分子材料を対象とした3Dプリンターに比べ高価です。ジェットエンジンのタービンブレードや人工関節など、航空宇宙分野や医療機器分野を中心に実用化も進みつつあります。

※3 不動態皮膜
金属表面に形成した耐食性を有する酸化皮膜のこと。一般に金属材料では水溶液中において腐食による材料劣化が起こりますが、不動態皮膜が安定に存在することにより内部の金属を腐食から保護します。貴金属を除いた耐食性金属材料は不動態皮膜により耐食性が付与されており、ステンレス鋼に代表されるように主にCr酸化物(Cr2O3)を用いられています。

詳細(プレスリリース本文)※2020年9月1日に訂正版へ差替えPDF

※1頁目の【概要】の誤字を以下のとおり訂正いたしました。
<訂正前>
ハイエントピー合⾦
<訂正後>
ハイエントロピー合金

問い合わせ先

(研究内容に関して)
東北大学金属材料研究所
加工プロセス工学研究部門
准教授 山中 謙太
TEL:022-215-2118 FAX:022-215-2116
E-mail:k_yamanaka*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
E-mail:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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