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非翻訳領域における翻訳開始機構を解析 〜非翻訳領域における新規のコーディング領域を発見〜

【発表のポイント】

  • 遺伝子をコードしていない非翻訳領域(UTR)が翻訳される仕組みを解明しました。
  • 4つの遺伝子において、3'非翻訳領域中(3'UTR(注1))にリボソーム(注2)をリクルートするIRES(注3)配列と、タンパク質をコードする新規dORF を発見し報告しました。
  • dORFの翻訳開始は、メチオニンコドンだけではなく、ロイシンコドンによって生じることを明らかにしました。
  • dORFの発現は、上流の遺伝子発現を負に制御することを明らかにしました。
  • 3'UTRにおける翻訳を介した遺伝子発現制御機構の解明は、これまで不明であった様々な疾患の原因解明につながることが期待されます。

【概要】

近年の分子生物学の発展により、ゲノム中のどの配列が翻訳されているのかを網羅的に解析する手法が確立され、その結果、非翻訳領域が翻訳されていることが示唆されるデータが報告されました。しかしながら、この翻訳がどのような因子に依存しているのか、詳細はこれまで不明でした。東北大学大学院薬学研究科の稲田利文教授、信田理沙学術研究員と、兵庫県立大学今高寛晃教授、町田幸大准教授らの研究グループは、その翻訳開始機構の詳細を明らかにしました。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(A)、(C)、日本医療研究開発機構の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「全ライフコースを対象とした個体の機能低下機構の解明」、(公財)武田科学振興財団、(公財)加藤記念バイオサイエンス振興財団の研究助成により実施しました。この研究成果は、2020年9月18日(金曜日)17時(日本時間)に英国科学誌『Nucleic Acids Research』にオンライン掲載されました。

図1. 3'UTRにおけるeIF4Gを介した翻訳開始機構と上流の遺伝子発現抑制の模式図。

【用語解説】

注1 3'UTR : 3'側非翻訳領域の略。mRNA上には、遺伝子をコードしない非翻訳領域が存在する。この非翻訳領域は、コーディング領域を挟む形で配置されており、コーディング領域よりも3'側の配列を3'UTRと呼ぶ。

注2 リボソーム: mRNAの持つ遺伝情報に従ってアミノ酸同士を結合させ、タンパク質を合成する装置。タンパク質とRNAから構成される巨大な複合体である。

注3 IRES(Internal Ribosome Entry Sites) : リボソーム内部結合配列の略。リボソームのmRNA上へのリクルートには、本来、翻訳開始因子を必要とするが、翻訳因子にほとんど依存せず、リボソームをリクルートすることが可能な配列。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
稲田 利文教授
電話:022-795-6874
メールアドレス:toshifumi.inada.a3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(東北大学に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 星野公太郎
電話:022-795-6801

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