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植物ミトコンドリアの品質管理経路を発見-マイトファジーが支える植物の紫外線耐性-

【概要】

理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター分子生命制御研究チームの泉正範上級研究員、中村咲耶訪問研究員、萩原伸也チームリーダー、東北大学大学院生命科学研究科の日出間純准教授、自然科学研究機構生命創成探究センターの根本知己教授(同機構生理学研究所教授)らの共同研究グループは、細胞内自己分解システムである「オートファジー[1]」が植物ミトコンドリア[2]の品質管理を担うことを発見しました。

本研究成果は、過酷な自然環境や地球外環境での植物栽培に向けたストレス耐性植物の設計に役立つと期待できます。

これまで、太陽光を利用して生きる植物が常にさらされている紫外線障害の耐性に、オートファジーが関わることが明らかになっていました。しかし、オートファジーが紫外線耐性をどのように支えているか、その全容は未解明でした。

今回、共同研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、紫外線耐性におけるオートファジーの役割を詳細に解析しました。最新の顕微鏡装置を含む細胞内イメージング解析などを積み重ねた結果、葉において紫外線障害で機能不全となったミトコンドリアが、オートファジーによるミトコンドリア分解(マイトファジー[3])で除去されることを明らかにしました。

本研究は、科学雑誌『Plant and Cell Physiology』において特に重要な成果を発表するrapid paperとしての掲載に先立ち、オンライン版(12月23日付:日本時間12月23日)に掲載されました。

シロイヌナズナの葉で観察したミトコンドリア画像(緑がミトコンドリア)

【用語解説】

[1] オートファジー、オートファゴソーム
オートファジーは植物、動物、酵母など、真核生物に広く保存されるタンパク質などの細胞内成分の分解システム。「自食作用」とも呼ばれる。細胞質の一部や細胞内小器官(オルガネラ)をオートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞で取り囲み、細胞内で高い分解活性を持つ酸性の小器官である液胞(あるいはリソソーム)に運ぶことで、分解・消化する仕組み。タンパク質や脂質をアミノ酸や脂肪酸にまで分解することで、それらを新しいタンパク質の合成や若い器官の形成に再利用できる。

[2] ミトコンドリア
動植物を含むほとんど全ての真核生物の細胞に存在する二重膜のオルガネラであり、主に呼吸によるエネルギー生産を担う。内膜の電子伝達鎖によるエネルギー生産の過程で、副次的に活性酸素が形成されてしまうため、酸化障害が起こりやすい。

[3] マイトファジー
ミトコンドリアを分解対象とするオートファジーのこと。哺乳類や酵母においては、特にその仕組みや重要性について盛んに研究されてきており、機能障害を起こした、あるいは余分となったミトコンドリアはマイトファジーで積極的に取り除かれることが知られている。植物でマイトファジーが起こる直接的な証拠はこれまで示されていなかった。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院 生命科学研究科
准教授 日出間 純(ひでま じゅん)
電話番号:022-217-5690
E-mail:jun.hidema.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院 生命科学研究科広報室
TEL:022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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