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軟X線渦ビームのらせん波面の観測に成功 -磁性体中のトポロジカル欠陥構造に対する新たな観測手法-

【本研究成果のポイント】

  • 軟X線の特殊な状態である渦ビームに対して、試料からの散乱と参照光の間の干渉効果を利用することにより、らせん波面の観測に成功
  • スキルミオン格子に存在するトポロジカルな欠陥構造(※1)を、渦ビームの位相測定により観測できることを発見
  • 磁性体中のトポロジカル欠陥構造に対して、本手法が新たな観測手法になり得ることを提示

【概要】

東北大学大学院理学研究科の石井祐太助教、分子科学研究所 山本航平研究員、高輝度光科学研究センター(JASRI)放射光利用研究基盤センター 横山優一博士研究員、水牧仁一朗主幹研究員、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の中尾裕則准教授、理化学研究所創発物性科学研究センター 有馬孝尚チームリーダー、物質・材料研究機構 山崎裕一主任研究員(兼KEK 客員准教授)らのグループは、インライン型ホログラフィー(※2)の手法を用いて、フォーク型回折格子(※3)から生成されたらせん状の軟X線渦ビームの位相分布を観測することに初めて成功しました。更に、ナノメートル(10億分の1メートル)領域の磁気渦構造であるスキルミオンの格子において、欠陥構造が存在する場合、本手法により欠陥のトポロジカルな構造の推定が可能であることを、シミュレーションにより明らかにしました。これらの結果は、磁性体中に存在するトポロジカルな欠陥構造に対して、本手法が新しい計測手段になり得ることを示しています。

本研究の成果は米国現地時間の12月24日、学術誌Physical Review Appliedに掲載されました。

図 1. フォーク型回折格子により生成される軟X線渦ビーム

【用語解説】

※1.トポロジカルな欠陥構造
欠陥の周りを一周する際に、位相も回転する特殊な構造。また、位相の回転数をトポロジカル数と呼ぶ。このような構造は、数学の一分野である位相幾何学(トポロジー)によって取り扱われる。トポロジーは、ある形と別の形のつながり具合を表す概念である。例えば、ある図形が連続変形によって別の図形に移り変わるとき、それらの図形はトポロジカルに同じとみなす。一方で、トポロジカルな欠陥構造と欠陥の無い構造は、連続変形で互いに移り変わることができず、異なるトポロジーを持つ。このようなトポロジカル欠陥構造は、磁気構造・結晶構造・神経細胞等、様々なもの・現象の中で観測されている。

※2.インライン型ホログラフィー
試料からの散乱と参照光の間の干渉効果を利用した実験手法。干渉により、通常は観測されない散乱光の位相情報を得ることができる。散乱光と参照光は、同軸方向に進むことが特徴。

※3.フォーク型回折格子
上半分と下半分の格子数が異なる回折格子。格子数の差がトポロジカル数となる。フォーク型回折格子は、トポロジカルな欠陥構造とみることができる。図1参照。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究内容に関すること>
東北大学大学院理学研究科
助教 石井祐太
Tel: 022-795-7750
e-mail: yuta.ishii.c2@tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道担当>
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
Tel: 022-795-6708
e-mail: sci-pr@mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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