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父親の加齢が子どもの発達障害の発症に影響する -マウス加齢モデルにおける精子DNA低メチル化が鍵-

【研究のポイント】

  • マウスにおいて父親の加齢によって生じる精子の非遺伝的変化(DNAメチル化注1の低下)を同定した
  • 加齢父マウス由来仔マウスの脳で働く遺伝子の網羅的解析により、脳の発生プログラムの異常を明らかにした
  • 加齢精子におけるDNA低メチル化領域と胎仔脳で発現が上昇している遺伝子群に共通して、REST/NRSF注2タンパク質が関与している可能性を見出した

【研究概要】

精神遅滞や自閉スペクトラム症等、子どもの神経発達障害は増加の一途をたどっており、少子高齢化が進行する社会で大きな問題となっています。疫学的調査より、子どもの発達障害が生じるリスクには、母親よりも父親の年齢の方が大きく関与することが知られていましたが、そのメカニズムは不明でした。東北大学大学院医学系研究科・発生発達神経科学分野の大隅典子教授らを中心とする研究グループは、父親の加齢に伴う子どもの神経発達障害発症の分子病態基盤として、神経分化を制御するタンパク質であるREST/NRSFが関与し、加齢した父親の精子の非遺伝的要因が子どもに影響することを発見しました。本研究は、父親の加齢による次世代個体の神経発生への影響を遺伝子レベルで解明した初めての報告です。本研究により、神経発達障害の新たな分子病態基盤の解明に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2021年1月5日正午(現地時間、日本時間1月5日午後8時)EMBO Reports誌(電子版)に掲載されました。

図. 研究のまとめ
父親マウスの高齢化に伴う精子のDNA低メチル化は仔マウスの発達障害様行動異常の原因であり、その分子メカニズムとして、精子および仔マウス神経発生の共通分子基盤としてREST/NRSFが関与することを見出した。

【用語説明】

注1. DNAメチル化: DNAの特定の塩基が修飾(メチル基の付加)されること。一般的には遺伝子のスイッチがオフになると考えられている。

注2. REST/NRSF(レスト/ エヌアールエスエフ):RE1-Silencing Transcription factor (REST)もしくはNeuron-Restrictive Silencer Factor (NRSF)と呼ばれる神経分化を制御する転写制御因子。ゲノム上で標的遺伝子の制御領域に結合することにより、標的遺伝子の活性をオフにする抑制因子として知られる。REST/NRSFは胎仔脳の神経幹細胞で働き、その機能が異常になると小脳症等が生じる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

EMBO(欧州分子生物学機構)からのプレスリリース(英文)外部サイトへ

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野
教授 大隅 典子
電話番号:022-717-8203
Eメール:osumi*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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