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脚を失った昆虫は歩行中の筋収縮リズムを変えて適応する!〜脚からの感覚フィードバックが脚間協調運動の鍵〜

【発表のポイント】

  • コオロギの脚切断前後の足並み(脚の運動)と筋活動*1の変化を計測
  • 健常個体では通常の歩行時は左右反対位相*2で活動する中脚の筋収縮のリズムが、脚切断時は左右同位相*2の活動に変化することが明らかになった
  • 脚に存在する感覚器*3からの感覚フィードバック*4が脚間協調運動*5生成の鍵

【概要】

昆虫は、外敵に襲われたり事故などで脚を失って身体の特性が変化したり、環境が変化したりすることに対して、柔軟に足並みを変化させることで歩行を続ける適応能力を有しています。この能力を解明することは、生物学に資するのみならず、昆虫のような高い適応能力を有するロボットの開発にも繋がります。

東北大学工学研究科 大脇大(おおわきだい)准教授、北海道大学電子科学研究所 青沼仁志(あおぬまひとし)准教授、大阪大学大学院工学研究科 杉本靖博(すぎもとやすひろ)准教授、東北大学電気通信研究所 石黒章夫(いしぐろあきお)教授らの研究グループは、コオロギを使って歩行中の脚の運動と筋活動を計測し、中脚の筋収縮のリズムが、脚の切断前後で、左右反対位相から左右同位相に変化することを明らかにしました。この結果は、(1) 左右同相同期の筋収縮リズムを生成する神経回路の存在、(2) 脚に存在する感覚器からの感覚フィードバックにより同相同期パターンが上書きされ、通常歩行時の左右反対位相のリズムが生成される、ことが示唆されます。

本研究成果は、2021年1月14日に英国の科学誌Scientific Reports電子版に掲載されました。

図1:脚切断前後の歩行と筋活動の変化。
上:健常個体の歩行。下:左右の中脚切断時。左:歩行パターン。右:左右の中脚の筋活動。歩容は、トライポッドに近い歩容(LF-RM-LHとRF-LM-RHで交互に接地)から脚切断後にトロットに近い歩容(LF-RHとRF-LHが交互に接地)に変化。筋活動は、脚の運動(右図の色塗りが接地期間)と同様に左右反対位相で筋収縮していたのに対して、脚切断後は左右同位相の筋収縮リズムに変化。

【用語解説】

*1 筋活動:運動を生成する際の筋肉の活動。筋肉が収縮する際の筋繊維の活動電位(筋電図)を計測することによって測定できる。

*2 反対位相、同位相:本研究での位相とは、脚の運動のタイミング、筋活動のタイミングと同意。同じタイミングで筋が活動することを同位相。歩行1周期中の半周期タイミングがずれて活動する場合を反対位相(あるいは逆位相)という。

*3 感覚器:動物の身体に存在する器官で、外部環境や体内の様々な物理的あるいは化学的な信号を刺激として受容する器官。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など。

*4 感覚フィードバック:感覚器からの入力信号に基づき、効果器(運動器)への出力を調整する仕組み。

*5 脚間協調運動:多脚動物における脚の間の協調運動。ヒト(二脚)、四足哺乳類(四脚)、昆虫(六脚)などの脚式移動動物は、それぞれの脚間の運動を協調させることで、状況に応じた歩行パターンを生成している。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院工学研究科
担当 大脇 大
電話: 022-795-4064
E-mail: owaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関して>
東北大学工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
電話: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学電気通信研究所 総務係
電話: 022-217-5420
E-mail: somu*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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