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40年の長期研究が明らかにした伊豆諸島の進化生物学~ヘビの捕食圧と温暖化が促したトカゲの体温上昇~

【発表のポイント】

  • 捕食者であるシマヘビが生息する島嶼では、活動時のオカダトカゲの体温が高くなる上、後脚がより長くなることを突き止めました。
  • オカダトカゲの体温は、近年急速に進行する地球温暖化に伴い、およそ40年間で1.3℃上昇していました。
  • オカダトカゲの体温は捕食圧に大きく依存しており、捕食者の存在が体温を上昇させていることから、温暖化は、このような外温性動物の捕食-被食の関係性の変化をさらに加速させる可能性があります。

【概要】

被食者の捕食回避がうまく機能するかどうかは、被食者のみならず、捕食者の熱収支に関連する生理的・行動的応答にも依存しています。研究グループは、1981年から2019年にかけてのおよそ40年間にわたり、伊豆諸島にて、捕食者であるシマヘビの在不在が、被食者であるオカダトカゲの生理的・熱的応答と形態的応答に与える影響を野外調査によって調べてきました。それによると、シマヘビがいる島のオカダトカゲは、シマヘビがいない島のオカダトカゲに比べて40年前と現在のどちらにおいてもおよそ2.9℃高い体温を示していました。加えて、オカダトカゲがシマヘビから逃げる時の速度に、後脚の長さが中心的な役割を担っており、シマヘビのいる島では後脚の長さに正の自然選択が働いていることがわかりました。また、オカダトカゲの体温は、40年前と比べて1.3℃上昇していることが明らかになりました。これらの結果は、シマヘビがいる島のオカダトカゲは、常に体温を高く維持した上、より速く走ることができる形態に進化することで、シマヘビの捕食を回避してきたことを物語っています。しかし近年急激に加速する気候変動を考慮すると、さらなる温暖化は、外気温に依存した捕食-被食者間の関係性を取り返しのつかないほど劇的に変化させてしまう可能性を示しています。

図1.八丈小島のオカダトカゲ
森林内で木漏れ日のあたる地面で日光浴を行って体温を維持している様子。
(撮影2018年5月18日 ©長谷川雅美)

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 大学院生・伊藤 舜(いとう しゅん)
TEL: 022-795-7560
E-mail:shun.ito.s6*dc.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
TEL:022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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