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腎臓に赤血球数と血圧を同時に制御する細胞があることを発見 〜貧血時の重要な機能、高血圧との関連も〜

【研究のポイント】

  • 腎臓注1の間質線維芽細胞注2が、赤血球を増やすホルモンに加えて、血圧を上昇させる物質レニン注3を産生することを発見
  • 腎臓の間質線維芽細胞は、酸素を運搬する赤血球の数と循環速度(血圧)を制御することにより、全身への酸素の供給量を維持する役割があることを明らかにした
  • 腎臓病では間質線維芽細胞がレニンを過剰につくりだし、そのレニンが高血圧の一因となることを解明

【研究概要】

腎臓は血液をろ過して尿を生成するだけではなく、赤血球の数や血圧を制御する機能も有しています。東北大学大学院医学系研究科の酸素医学分野 鈴木教郎 准教授らのグループは、腎臓の間質線維芽細胞が、赤血球を増やすホルモン、エリスロポエチン注4に加えて、血圧を上昇させる物質レニンも産生していることを明らかにしました。

これまでに、間質線維芽細胞ではエリスロポエチンがつくられ、レニンは腎臓の別の細胞(傍糸球体細胞注5)でつくられることが知られていました。今回の研究では、貧血で赤血球が減少して血圧が低下すると、血圧を上昇させるために間質線維芽細胞がレニンをつくりはじめることを新たに発見しました。この成果から、腎臓の1種類の細胞が酸素運搬を担う赤血球の数と血圧を制御し、全身への酸素供給を統合的に管理していることが判明しました。また、腎臓病注6になると間質線維芽細胞がレニンを過剰につくりだし、高血圧を引き起こすことも判明しました。今回の研究成果は、貧血の病態理解と高血圧の治療法開発に貢献すると期待されます。

本研究成果は、2021年1月26日国際医学雑誌イーバイオメディシン(EBioMedicine)に掲載されました。

図1.貧血時に腎臓の間質線維芽細胞が血圧を上昇させる物質「レニン」をつくり、赤血球の循環による酸素供給の効率を改善する。
腎臓の間質線維芽細胞は、エリスロポエチンとレニンの双方をつくり出すことにより、赤血球の循環効率を改善し、貧血時の酸素運搬効率を改善する役割があることを明らかにした。

【用語解説】

注1. 腎臓:血液をろ過して、老廃物を尿中に排泄する臓器。尿の生成のほかに、エリスロポエチンを分泌して赤血球を増やしたり、レニンを分泌して血圧を上昇させたりする機能も有する。また、リンやカルシウムなどの体内濃度を調節する。

注2. 間質線維芽細胞:ほとんどの臓器は、各臓器の主要な役割を担う部分である「実質」とその間をうめる「間質」で構成される。腎臓は、尿を生成するための「実質(糸球体[図1]など)」の隙間に「間質」が存在する。腎臓の間質には線維芽細胞と呼ばれる細胞が多く含まれており、実質の構造を支えている(図1)。

注3. レニン:血圧を上昇させる作用のあるタンパク質であり、主に腎臓の傍糸球体細胞から分泌される。

注4. エリスロポエチン:赤血球を増やすはたらきのあるホルモン。主に腎臓の間質線維芽細胞から分泌され、骨髄での赤血球の生産を促進させる。製剤化されたエリスロポエチンは、貧血の治療薬として優れた効果を発揮している。

注5. 傍糸球体細胞:腎臓で血液のろ過を担う糸球体に隣接して存在する細胞。レニンの分泌に特化した役割を担うことから、レニン細胞とも呼ばれる。

注6. 腎臓病:世界人口の1割以上が罹患しているものの、特効薬がなく、病態が進行すると人工透析や腎臓移植が必要となる。そのため、世界各国で医療費を高騰させる大きな要因となっている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 酸素医学分野
准教授 鈴木教郎
電話番号:022-707-8206
Eメール:sunorio*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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