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脳内グリアによるてんかん重篤化メカニズムの解明 グリア細胞を標的とした新規てんかん治療戦略の開発へ

【発表のポイント】

  • 脳内グリア細胞*1の一種であるアストロサイトの細胞機能は、まわりの神経活動に応じて可塑的に変化することが示されました。
  • アストロサイト細胞機能の可塑性が、てんかんの重篤化につながることを発見しました。
  • これまでの抗てんかん薬は、神経細胞を標的としたものがほとんどでしたが、アストロサイトの機能変化を抑制する治療戦略によって、てんかんの重篤化の予防に繋がることが期待されます。

【概要】

脳は、神経細胞とグリア細胞の2種類の細胞で成り立っています。グリア細胞の一種であるアストロサイトは、脳内イオン環境を制御しており、健常な興奮と抑制バランスの維持に重要です。東北大学大学院生命科学研究科の小野寺麻理子(博士後期課程学生・日本学術振興会特別研究員)・松井広教授らのグループは、神経細胞の過剰な興奮によってアストロサイトの機能に可塑的な変化が誘導され、脳内イオンバランス機構が乱れることで、てんかんの重篤化が進むことを明らかにしました。また、実験動物のマウスを用いた研究では、アストロサイトの機能的な変化のきっかけはアストロサイトの細胞内がアルカリ化することであることが示され、この機構を薬理学的に阻害すると、てんかん発作の重篤化を防止できることを解明しました。本研究成果は、将来的には、アストロサイトを標的とした、新規抗てんかん治療戦略の開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、2021年1月21日付でJournal of Neuroscience誌にEarly Releaseとして掲載されました。

【用語解説】

*1 グリア細胞:
脳内の細胞は、神経細胞とグリア細胞に分類されます。神経細胞は活動電位で情報を表現し、神経細胞同士をシナプス結合でつなぐネットワークで脳内情報処理が進むと考えられてきています。グリア細胞は、神経細胞の隙間を埋めて、神経細胞への栄養供給をする存在だと考えられてきましたが、近年、グリア細胞も特有の情報表現をしていて、神経細胞の担う情報処理に影響を与えることが認識されるようになってきました。K+クリアランスも、グリア細胞の担う重要な機能のひとつであり、今回、このK+クリアランス機能が可塑的に変化することが示されました。今回、捉えたのは、てんかん病態時における変化ですが、生理的な条件でもギャップ結合が変化することで、脳内情報処理の特性が変化する可能性も考えられます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当:教授 松井 広(まつい こう)
電話番号:022-217-6209
Eメール:matsui*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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