2021年 | プレスリリース・研究成果
卵巣がん転移を抑える新しいメカニズムの解明 セラミド合成酵素2の活性化で卵巣がん細胞の運動能低下
【本件のポイント】
- 卵巣がんは予後不良のがんであり、その原因としてがんの転移が深く関与している
- 高い転移性を示す卵巣がん細胞において、CerS2の発現量は低下していることが判明した
- がん細胞の運動能の促進は転移能を高めることが知られており、CerS2の活性を抑制すると、卵巣がん細胞の運動能は促進し、一方で、CerS2の活性を増強すると、運動能が抑制された
- CerS2によって生成される極長鎖C24:1-セラミド分子種が、卵巣がん細胞の運動能を低下させることで、がん転移を抑える可能性が判明した
- CerS2は、卵巣がんの新たなバイオマーカー・創薬標的となる可能性がある
【概要】
摂南大学(学長:荻田喜代一)薬学部の北谷和之講師と東北大学大学院医学系研究科の八重樫伸生教授、金沢医科大学総合医学研究所生命科学研究領域の谷口真講師らの国際共同研究グループは、卵巣がんにおける転移の新たなメカニズムとして、脂質の1種であるセラミド注1を生成するセラミド合成酵素2(CerS2)注2ががん細胞の運動能および転移能を抑制することを新たに見いだしました。
卵巣がんは婦人科の悪性腫瘍の中で最も予後が悪く、新たながん治療薬の開発が望まれています。
本研究によって、CerS2は、卵巣がんの転移を抑える調節酵素である可能性が見い出されました。現在、がんの再発・転移を予測・コントロールすることは極めて困難ですが、今回明らかになった転移調節機構の解明によって、今後の卵巣がんの新たなバイオマーカー・治療薬の開発につながることが期待されます。
図: CerS2の役割:CerS2の活性を抑制することでC24:1-セラミド量が減少し、卵巣がん細胞の運動能が促進されてがん転移を誘導する。
【用語解説】
注1.セラミド:生体膜を構成するスフィンゴ脂質群の一つであり、プログラム化細胞死や抗炎症応答などさま ざまな生理作用の発現に関与している。
注2.セラミド合成酵素2(CerS2):セラミドを生成する酵素であり、これまでに6つのアイソフォーム(CerS1-6)が同定されている。この内、CerS2は極長鎖C24またはC24:1-セラミド分子種の合成にかかわる。
問い合わせ先
東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野
非常勤講師 石橋ますみ
Eメール:masumi.ishibashi.d6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材について)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL:022-717-7891
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)