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カゴメ格子の極薄ナノ結晶でも安定な強磁性 磁性ワイル半金属の起源解明に前進

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:金属材料研究所・教授・塚﨑 敦
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 磁性ワイル半金属Co3Sn2S2のCoカゴメ格子を有するナノサイズの粒状結晶に、垂直磁化の強磁性を初めて検出。
  • 強磁性は磁性ワイル半金属状態を実現するために不可欠な性質。
  • 新省電力素子原理として期待される量子伝導の実現に向けて重要な知見。

【概要】

トポロジー(位相幾何学)の観点から固体の性質を理解・分類しようとするトポロジカル物質科学が急速な発展を遂げています。東北大学金属材料研究所の池田絢哉大学院生(理学研究科物理学専攻)、藤原宏平准教授、塩貝純一助教、関剛斎准教授、野村健太郎准教授、高梨弘毅教授、塚﨑敦教授らの共同研究グループは、トポロジカル物質の一種である磁性ワイル半金属Co3Sn2S2が極薄のナノ結晶(※1)でも垂直磁化の強磁性(※2)を示すことを初めて明らかにしました。

Coカゴメ格子から成る磁性ワイル半金属(※3)Co3Sn2S2(図1)では、カゴメ格子単層極限における量子伝導の発現が理論提唱されています。しかし、磁性ワイル半金属状態の実現に不可欠な強磁性が熱揺らぎに弱い極薄試料で維持されるかは不明でした。本研究では、強磁性が極薄ナノ結晶でも安定であることを明らかにするとともに、磁性ワイル半金属状態が膜厚の増加に伴い発達していく様子を捉えることに成功しました。

この成果は、磁性ワイル半金属に関する重要な知見を提供するだけでなく、薄膜試料を用いた機能素子の開発にも貢献するものと期待されます。本研究成果は、2021年2月18日(英国時間)に、英国科学誌「Communications Materials」オンライン版に掲載されました。

【用語解説】

※1 ナノ結晶
ナノメートルスケールの結晶。ここでは、基板上で面内方向に連結しておらず、互いに孤立した結晶性ドメインを指す。

※2 強磁性
電子が持つミクロな磁石の性質であるスピンが同じ方向に並ぶことで、マクロな磁化を生み出している磁気的状態。鉄、ニッケル、コバルトが代表的な強磁性を示す物質。垂直磁気異方性は、薄膜の面直方向に磁場を印加した時に磁化が生じやすく、ゼロ磁場に戻した後でも磁化が維持されやすい状態。

※3 磁性ワイル半金属
二次元物質グラフェンやトポロジカル絶縁体の表面には、線形分散をもつ電子状態(線形分散バンド)が現れる。三次元の物質全体が線形分散バンドと磁気秩序を有し、かつ、スピン軌道相互作用の寄与がある場合、運動量空間で特定の対称性をもつ点以外でギャップが開く。この状態の電子の運動は相対論的ワイル方程式で記述されることから、磁性ワイル半金属と呼ばれる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所 低温物理学研究部門
准教授 藤原 宏平
TEL:022-215-2088
Email:kfujiwara*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

教授 塚﨑 敦
TEL:022-215-2085
Email:tsukazaki*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144
FAX:022-215-2482
Email:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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