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開放隅角緑内障に関係する127の遺伝的変化を発見 -世界14カ国の大規模国際共同研究で民族集団に共通した因子に迫る-

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院医学系研究科 眼科学分野・主任教授・中澤 徹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界14カ国の開放隅角緑内障*1患者3万人以上の遺伝情報について、ゲノムワイドメタ解析*2を行い、開放隅角緑内障に関連する127の遺伝的座位*3を同定した。
  • ヨーロッパ系民族集団の開放隅角緑内障患者に関連する多くの遺伝的座位が他の民族集団(アジア系、アフリカ系)でも一致した影響度を示した。
  • これらの成果は今後、緑内障病因の解明や治療法の開発や予防医学研究に貢献すると期待される。

【概要】

緑内障は視神経が障害を受ける眼疾患で、世界中で主たる失明原因となっています。その主な病型は開放隅角緑内障ですが、開放隅角緑内障患者における遺伝要因の民族集団差の大部分は解明されていませんでした。

今回、国際共同研究グループは、多民族集団の開放隅角緑内障患者34,179名と対照群349,321名を対象に、ヒトゲノム全体に分布する一塩基多型(SNP)*4のゲノムワイドメタ解析を行いました。その結果、127カ所の遺伝子領域が開放隅角緑内障との関連を示し、そのうち44カ所は今回新たに発見されたものでした。さらに、開放隅角緑内障の発症に関わる遺伝要因の民族集団ごとの違いを明らかにするため、ヨーロッパ系民族集団で開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、他の民族集団における発症リスクへの影響を検証したところ、両者の間に高い相関が見られました。これは、多くの開放隅角緑内障の発症に寄与するSNPの影響度が民族集団に共通していることを示しています。

これらの成果は今後、緑内障病因の解明や治療法の開発、予防医学研究に貢献すると期待できます。この成果は米国時間2021年2月24日にオンライン科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

図1.多民族集団における開放隅角緑内障患者の遺伝解析結果
X軸にSNPの染色体位置、Y軸に各SNPの-log10P値を示した図(マンハッタン・プロット)で、上に行くほど開放隅角緑内障との関連が強い。多民族集団(患者34,179名、対照群349,321名)の遺伝解析の結果、統計学的に有意な関連が認められた遺伝子領域は黒のラインより上にあるものである。

【用語解説】

*1 開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう):眼球の角膜と虹彩が接する部分である隅角が広いもの(正常所見)の、視神経乳頭と網膜神経線維層に緑内障に特徴的な形態変化を有するもの。緑内障の主要な病型である。日本人の 40 歳以上の緑内障の有病率は 5.0%であり、開放隅角緑内障は最多の 3.9%を占めることが疫学調査より明らかになっている。

*2 ゲノムワイドメタ解析:疾患や身長などの量的な形質に影響があるゲノム上のマーカーを、網羅的に検索する方法(ゲノムワイド関連解析(GWAS))で実施された複数の研究結果を統合し、解析を行う手法。

*3 遺伝的座位:染色体やゲノム上の、なんらかの遺伝子、もしくは多型などのマーカーが存在する位置のこと。

*4 一塩基多型(SNP):ゲノム配列において、ある領域で DNA の塩基配列が一塩基のみ個人間で異なる多様性のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科眼科学分野
教授 中澤 徹 (なかざわ とおる)
電話:022-717-7294
Eメール:ntoru*oph.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
広報戦略室長
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話:022-717-7902
FAX:022-717-7923
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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